風呂に入らず周囲に悪臭 「スメハラ」モンスター部下
フェリタス社会保険労務士法人代表 石川弘子(7)
画像はイメージ =PIXTA
あり得ないようなトラブルを巻き起こす「モンスター部下」が最近増えているという。相談をよく受ける社会保険労務士の石川弘子氏は、その実態と対処法を近著「モンスター部下」(日経プレミアシリーズ)にまとめた。石川氏が相談を受けたモンスター部下の実態を同書から紹介する。
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創業30年の輸入商社。従業員数120名ほどで東京に本社、神奈川に支社がある。社員の平均年齢は比較的若く、人間関係は良好。
登場人物
N原:営業担当の30代男性社員。妻と幼稚園に通う子供がいる。性格はよく言えば大らか、悪く言うとだらしがなく、暴飲暴食と運動不足で肥満気味。
Y山:営業事務の20代女性社員。はっきり物を言うタイプで、気が強い。仕事は早く正確なので、上司の評価は高い。何事にもだらしないN原のことを嫌っている。
A田:N原とY山の上司にあたる営業課長。40代男性。営業職としては非常に優秀だが、マネジメントは苦手。人当たりがよく穏やかで、揉め事が嫌い。
「身なりや臭いが不快なので、担当を替えて下さい」
ある日の午後、得意先から戻ったA田に営業事務のY山が声をかけた。
「課長、○○社の担当さんから、うちの担当を替えてほしいって電話がありました」
(クレームか……)
A田は憂鬱な気持ちになって、Y山に事情を聞いた。Y山の報告によると、営業のN原が担当している客である○○社の担当から、N原の身なりや臭いが不快なので、担当から外してほしいというのだ。Y山は「そりゃそうですよね」とここぞとばかりに自分の思いをぶちまけた。
「N原さん、煙草の臭いがスーツに染み付いていて、遠くからでも臭うし、口臭もひどいです。それに、絶対毎日お風呂に入っていないですよ。髪の毛も脂でベタベタだし、ちょっとなんていうか汗と垢の臭いっていうか……。とにかく臭いんです! 私たちも迷惑してます。課長から言ってください!」
A田は、Y山の言い分ももっともだと思う。N原はとにかく見た目もだらしなく、臭いは少し離れた席にいるA田の方にも届くほどだ。近くの席のY山は耐えがたいだろう。今までも何度かやんわりと注意しているが、N原は「気を付けます」とは言うものの、変化はない。
「本人に話してみるから」
とY山をなだめると、A田は戻ってきたN原に「話がある」と声をかけて会議室に誘った。