首相「原発冷温停止は私の責任」 年明けまで続投意欲
菅直人首相は2日夜の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所の事故の収束に一定のメドをつけた時点で退陣する意向を表明した。来年1月までの続投を示唆したもので、党内対立の調停役となった鳩山由紀夫前首相が主張する今月中の退陣とは食い違う。野党が同日提出した内閣不信任決議案は否決されたが、退陣時期を巡る対立は激化し、採決に欠席した小沢一郎元代表らとの亀裂も深刻化している。政局は一段と混乱しそうだ。
首相は2日夜の記者会見で「原子炉の冷温停止、放射性物質の放出がほぼ無くなるまで全力を挙げる。当然の私の責任だ」と表明。東電の原発事故対応の工程表で10月中旬から来年1月としている時期まで退陣しない考えを示唆した。
首相は同日昼、不信任案採決前の民主党代議士会で「震災対応など一定のメドがついた段階で、若い世代に責任を引き継いでいただきたい」と表明。これに先立つ鳩山氏との会談では(1)復興基本法案の成立(2)今年度第2次補正予算の早期編成にメドをつける、との確認書を交わしていた。
首相の発言を受け、鳩山氏は党代議士会でこの2点を「退陣のメド」と説明。不信任案採決後には記者団に「2次補正は6月いっぱいにメドが立つ。メドが立った時期に身を引いてほしい」と首相が月内に退陣するとの見通しを示していた。
首相と鳩山氏の会談に同席した岡田克也幹事長は2次補正の早期編成などを「退陣の条件にはなっていない」と表明。鳩山氏が「ウソだ」と応酬し、退陣時期を巡って党内対立が表面化した。
首相は同日夜の記者会見で「確認書で書かれた以外の一切の約束はない」と述べ、岡田氏と同様に鳩山発言を否定した。首相の退陣表明は2日の不信任案採決で民主党内の造反の動きを抑える大きな判断材料となっただけに、退陣時期を巡る対立が党内に大きな混乱を招くのは必至だ。
同日採決した不信任案は賛成152、反対293、欠席・棄権は33だった。共産、社民両党は棄権した。採決直前の首相の退陣表明で、民主党からの大量造反は回避されたが、党内からは元代表に近い松木謙公氏と、離党を表明していた横粂勝仁氏の2人が賛成。元代表とそのグループの議員、田中真紀子元外相ら15人が棄権した。
国会運営の見通しも立たない。自民党の谷垣禎一総裁は記者会見で、予算執行への影響が大きい赤字国債法案や2次補正予算案について、首相退陣後の次期政権で取り組むべきだとの考えを表明した。公明党の山口那津男代表も「辞めることを宣言した首相が責任を持って仕事をできるのか」と強調した。