首相の延命戦略狂う 復興相辞任で「看板」に傷
早期退陣圧力、一段と
松本龍復興担当相の辞任は、東日本大震災からの復興を名目に政権維持を狙う菅直人首相の延命戦略にも打撃となる。任命からわずか9日目での目玉閣僚の降板で、野党は首相の任命責任を追及する方針。民主党内でも早期退陣圧力が強まりつつある。看板の「復興」でも傷付き、菅首相の政権運営は一段と厳しさを増す。
首相はすでに「震災対応に一定のメドが付いた段階」で辞任する考えを表明。具体的には、今年度第2次補正予算案、赤字国債発行法案、再生エネルギー特別措置法案の成立を挙げている。しかし、復興対策の中核に据えた復興相のスピード辞任で、3条件を満たさない時点での退陣論が再燃する可能性が大きい。
民主党の鳩山由紀夫前首相は5日午前、都内で記者団に「被災者の神経を逆なでしたので辞任は当然だ」と指摘。「首相の任命責任も当然出てくる。本気で復興に当たるためには本気の内閣を作らなければだめだ」と首相の早期退陣を求めた。首相に批判的な勢力には「首相の責任を問うため両院議員総会を開くべきだ」との声もある。
民主党の安住淳国会対策委員長は「残念だが、やむを得ない」としたうえで、国会運営への影響に関して「できるだけないようにするのがわれわれの仕事だ」と述べた。党執行部は復興相辞任で事態の早期収拾を目指すが、重要法案審議への影響を懸念している。
政権批判を強める野党は矛先を首相に向ける。自民党の谷垣禎一総裁は役員会で「松本氏は菅首相の下で仕事をすることに耐えられなかったのではないか。首相は一刻も早く退陣した方がいい」と強調。石原伸晃幹事長も記者会見で「菅首相の退陣が復旧・復興に一番資する」と力説した。公明党の山口那津男代表は記者会見で「辞任は当然で、首相の任命責任は厳しく問われなければいけない」と語った。
自民党の逢沢一郎国対委員長は党の会合で、原発賠償支援法案など震災関連法案の審議入りを慎重にすべきだとの考えを示した。