株、世界の主要市場で復調 政治の不透明感薄れ
日本株、外国人が見直し
2012年の日本の株式相場は、新政権への政策期待や円高修正を支えに年間で23%上昇した。世界の主要市場を見ても今年は平均で1割強上昇しており、年前半に低迷したところでも後半に持ち直す動きが目立つ。欧州やアジアでは政治や経済を巡る不透明感が薄らぎ、投資家の心理が改善、株式市場に資金が戻っている。新たな成長を求めるマネーは、東南アジア市場に向かっている。
世界の平均的な株価の値動きを示す「MSCI世界株指数」は昨年末から今月27日までに13%上昇した。世界の主要市場では米国株や中国株などの上昇率が低い一方、欧州不安の後退でドイツ株は約3割上昇し、リーマン・ショック前の水準を回復した。東南アジア株の上昇も際立つ。
出遅れていた日本株にも、衆院解散を機に世界の投資マネーが流入。日経平均は秋以降、大きく上げた。円高などを理由に日本株を少なめに保有していた海外投資家が、急速に見直しを進めた。
東京証券取引所の28日の発表によれば、衆院選直後の12月3週(17~21日)の外国人による日本株買越額は7019億円と、東日本大震災直後だった昨年3月中旬以来の規模。今週も買い越したもようで「外国人の買いの勢いはリーマン・ショック以降で最も強い」(ゴールドマン・サックス証券の宇根尚秀マネージング・ディレクター)。衆院解散が決まった11月第2週以降の買越額は1兆8千億円強に上り、年間の約7割を占める。
中国株も急回復
世界的に見ても、年前半は欧州債務問題への警戒感から株式投資を抑える投資家が多かった。しかし、ギリシャなどの財政危機を巡るユーロ圏内の対立が緩み、危機が南欧諸国に波及するとの悲観論が後退。輸出が好調で経済が安定しているドイツの株価指数は年央から上昇基調にある。南欧諸国も回復基調だ。
それまで下落基調だった中国株も12月に入って急回復し、上海総合指数は11月末以降に13%上昇した。中国共産党の総書記に習近平氏が予想通り就任、体制移行に伴う混乱が生じなかったことを市場は好感している。
習総書記は12月の中央経済工作会議で、農民の都市移住を推進する政策を打ち出した。市場は「新体制はインフラ整備に前向き」と受け止め、低迷していた建設機械や不動産株などが急騰に転じている。
新たな成長市場を見据えるマネーは、東南アジア市場に向かっている。フィリピン証券取引所総合指数(PSEi)は年初から3割強上昇、今年だけで過去最高値を38回更新した。中国やインドなどの景気に減速感が強まるなか、巨大な人口を抱え、内需が堅調なことが追い風だ。
ここでもけん引役は外国人投資家。年初からの買越額は1073億ペソ(約2200億円)と年間で過去最高だった06年の1.5倍強に達した。
「財政の崖」警戒
株式の配当利回りは世界平均で2.7%。歴史的な低金利のなか、株式投資に注目する投資家が増えている。米コンサルティング会社のタワーズワトソンは11月、債券や商品など主要資産のうち株式について、最も魅力があるという評価に引き上げた。スイスの金融大手UBSも顧客に対し、国債への投資を減らし、株式や社債への投資を勧めている。
ただ、米国では大型減税の失効などが重なる「財政の崖」問題がくすぶる。世界景気に不透明感が強まれば「立ち直り始めた投資家心理に水を差しかねない」(第一生命経済研究所)と、先行きについては慎重な見方もある。欧州でもひとまず債務危機は沈静化したとはいえ、市場の一部ではなお警戒感も残る。