子どもの先天性脳疾患、iPS細胞で解明 慶大教授ら
慶応大学の岡野栄之教授らは、子供に発症する先天性脳疾患の患者の細胞から作った新型万能細胞(iPS細胞)から、神経細胞を作り、病気の仕組みの一端を解明した。遺伝子の変異によって起きる難病だが、病気を再現できたことで、新たな治療薬開発に応用できるという。
都内で開催中の日本神経学会で24日、発表した。
対象になったのは大脳皮質が作れず思考や認知機能などに異常が出る「滑脳症」と、大脳の神経細胞が働かなくなりけいれんなどが起きる「ペリツェウス・メルツバッハー病」。いずれも希少疾患で国内の患者数は数十人から1000人程度とされる。
原因となる遺伝子は知られていたが、実際に胎児期から新生児期にかけて脳の神経細胞の成長がどのように妨げられているかは分かっていなかった。患者で確かめることはできず、モデル動物を作るのも難しく、治療法の開発は遅れている。
山形大学や慶大病院小児科などと組み、へその緒の細胞や皮膚細胞の提供を受けiPS細胞を作製、神経の細胞に育て遺伝子変異のない正常細胞と比べた。滑脳症ではグリア細胞に突起がみられず、大脳皮質の細胞が層状にならないことが分かった。ペリツェウス病ではオリゴデンドロサイトと呼ぶ細胞に異常が起きていた。