デジタル通貨へ厳格規制 独仏など5カ国提案
【ベルリン=石川潤】独仏などの欧州の主要5カ国は11日、デジタル通貨への厳しい規制を求める声明文を公表した。法や規制上の問題などが解決するまでは欧州連合(EU)内での発行を認めないとしたうえで、準備金の運用などに厳しい制限を課すことが柱だ。声明文をもとに、欧州委員会は23日にもEUとしての規制案をまとめる。
独仏のほか、イタリア、スペイン、オランダが提案に加わった。5カ国の念頭にあるのが、ユーロなどの法定通貨を価値の裏付けに発行するデジタル通貨、ステーブルコインだ。米フェイスブックのデジタル通貨構想「リブラ」が浮上したことで、欧州各国の警戒が強まっていた。
声明文には、デジタル通貨が金融の安定や決済の効率性、公正な競争などを損なってはならないという原則を明記した。そのうえで、規制の枠組みを作るうえで国の主権や金融政策に配慮し、消費者保護を優先すべきだとの考えを示した。
提案によると、裏付けとなる通貨とデジタル通貨の比率は1対1とし、裏付けとなる通貨(準備金)の運用は安全な預金などに限定する。さらに準備金はユーロなどEU内の通貨とし、換金の要請にはすぐに応じなければならないとした。
この規制が適用されれば、ドルやユーロなどの複数通貨を裏付けにするリブラは認められないことになる。DPA通信によると、フランスのルメール経済・財務相は「簡単な原則がある。中央銀行だけが通貨発行の認可を得られる」と語った。
通貨は国や地域の経済の根幹で、中央銀行は金利や流通量を調整することで経済を安定させてきた。民間のデジタル通貨が一気に広がれば、こうした金融政策が効きにくくなると指摘される。
信用力の低い国の通貨からデジタル通貨への逃避も起こりかねない。テロ組織などの資金洗浄に利用されるとの懸念も高まっていた。