破綻よそに高額報酬 資本主義、危機が問う進化
パクスなき世界 夜明け前(5)
企業の目的は利益だけなのでしょうか――。
「この計画は腹立たしい」。2020年9月、米レンタカー大手ハーツ・グローバル・ホールディングスの破産手続きを進める裁判で、裁判官の厳しい言葉が何度も発せられた。批判の矛先は経営陣にボーナスとして合計540万ドル(約5.7億円)を支払う計画。同社は一時解雇を含め1万6千人を削減した一方、破産申請の数日前にも役員に高額の特別手当を支給した。
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米百貨店大手JCペニーは破産申請の直前に最高経営責任者(CEO)に450万ドルを支払った。経営責任を問われるはずの幹部が利益を得ていた。従来、正当化されてきた米国の経営トップの高額報酬のひずみはコロナ禍で拡大している。
資本主義では企業を中心に利益を追求する行動が経済全体のパイを拡大してきた。18~19世紀の産業革命以降、企業を通じ雇用や所得が増え、中間層が大衆消費社会を支えた。企業の成長で労働者も恩恵を受けられた。
21世紀は大量雇用が不要なデジタル経済に軸足が移り
新型コロナウイルスの危機は世界の矛盾をあぶり出し、変化を加速した。古代ローマの平和と秩序の女神「パクス」は消え、価値観の再構築が問われている。「パクスなき世界」では、どんな明日をつくるかを考えていく。
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