習近平氏、台湾統一「必ず実現」 長期政権「公約」に
【北京=羽田野主】5年に1度の中国共産党大会が16日、開幕した。党トップの習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は活動報告で、台湾統一について「必ず実現しなければならないし、実現できる」と語った。5年前の報告より大幅に表現を強めた。党大会では異例の3期目続投を決める見通し。習氏は超長期政権を視野に、台湾統一を事実上の「公約」に掲げたかたちだ。
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約1時間45分の報告で人民大会堂にひときわ大きな拍手が起きたのが台湾統一の部分だった。習氏は「決して武力行使の放棄を約束しない」とも語り、台湾に軍事圧力をかけた。「中華全体の男女の共通の願い」とした5年前の報告にはなかった。
習氏の念頭には2つのことがあったとみられる。1つは8月にペロシ米下院議長が台湾を訪問するなど西側諸国と台湾の交流が活発になったこと。「外部勢力の干渉に断固反対する」と強調し、「台湾問題の解決は中国人自らのこと。中国人が決める」と米国の介入を強くけん制した。
もう1つは人民解放軍の一部にある台湾統一を求める声だ。党トップは2期10年までとの慣例を破って続投するならば、3期目以降に何をなし遂げるかを示す必要がある。その一つとして台湾統一への強い意欲を示した可能性がある。
16日の報告は経済成長の具体的な数値目標を見送った。胡錦濤(フー・ジンタオ)前総書記は2012年の党大会で20年の国内総生産(GDP)を10年比2倍にする目標を掲げた。新型コロナウイルスもあり、習氏はこの目標を達成できなかった。
代わりに掲げたのは「35年に1人あたりGDPを中進国並みにする」との曖昧な目標だ。数値目標は達成したかどうかが厳しく問われ、政権批判にもつながりかねないことを懸念した可能性がある。
35年までに「社会主義現代化」、50年ごろまでに「社会主義現代化強国」をそれぞれ実現するという長期目標も掲げた。35年に中国人の生活水準を大幅に引き上げ、50年に経済、軍事、文化でも米国に肩を並べる目標とされる。
超長期政権を視野に入れた目標と受けとれる。その達成に向け、習氏は「今後5年間が肝心な時期だ」と述べ、自らの続投を強く示唆した。
党内に習氏への権力集中を妨げる勢力はもはやない。就任後に進めた反腐敗運動で多くの政敵を失脚させた。引退した長老も衰えが目立ち、5年前には党大会に出席した江沢民(ジアン・ズォーミン)元総書記や朱鎔基元首相らは姿をみせなかった。
むしろ政権を揺さぶるのは経済かもしれない。22年通年のGDPの実質成長率は3%前後にとどまりそうで、東南アジア・南アジアの平均を約30年ぶりに下回る可能性がある。
今後は人口減少と高齢化による内需縮小と社会保障負担がのしかかる。23年にはインドに人口で抜かれる見込み。公式統計より中国の人口問題ははるかに深刻とされるが、習氏は「人口高齢化の国家戦略を実施する」と述べただけだ。
習氏の党トップ就任以降、中国の成長率はほぼ右肩下がりだった。中国では高成長を実現したことが一党支配への国民の支持につながってきた。経済の停滞が鮮明になれば、習氏の長期政権も足元から揺らぐ。
新指導部は党大会閉幕翌日の23日に発足する。習氏は今回も後継候補を選ばないとみられる。
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