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給食ビジネスモデル崩壊 最終赤字3割、値上げ難しく

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学校給食などを運営するホーユー(広島市)が9月に突然事業を停止した影響が広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大による利用者減少や物価高騰によって同社の経営状態は悪化。9月25日に、広島地方裁判所から破産手続き開始決定を受けた。同社の企業体質に問題があったのは明らかだが、全国の給食事業者の3割が最終赤字に陥る。業界全体の構造的な問題も浮かび上がる。

「もう、明日の朝食から給食を準備できない」

9月4日の昼、京都府立農芸高等学校(京都府南丹市)で給食業務を担当する教員は、契約する給食事業者から、こんな耳を疑う言葉を聞いた。同校は9月末に破産手続きを開始したホーユーに給食業務を委託していた。

突然、給食がストップすることになり、大混乱に陥った。同校は全校生徒の半分以上が校内の寮で生活している。教員は寮の翌朝食確保のため、同日夕方に近所のスーパーやコンビニエンスストアに駆けつけて、パンやおにぎりを約60人分購入した。

昼食と夕食については地元店などに頼み、弁当を手配した。朝食は地元店からパンを購入し、昼食と夕食は弁当を用意して対応しているという。同校の担当者は「今、ホーユーとは別の給食事業者と契約締結に向けて話を進めている。しかし、なかなか寮の食事の人数分まで確保するのが難しく、早くても10月からになりそうだ」と話す。

ホーユーと契約していた広島県内の高校でも、寮の食事が突如提供されなくなった。広島県教育委員会の担当者は「緊急対応として次の給食事業者が決まるまでの間、弁当などの手配をしている」と話す。担当者は「ホーユーが経営難だったことを把握するのは難しかった。毎月業務が履行されているのを確認しており、ホーユー側から値上げ交渉もなかった」と打ち明ける。

ホーユーは全国の学校や学生寮、官公庁など約150施設に給食事業を展開してきた。9月1日以降、約半数の施設で給食の提供を停止。9月25日には、広島地方裁判所から破産手続き開始決定を受けた。負債総額は約16億8000万円に上る。

取引があった金融機関の関係者によると、1〜2年前の時点でホーユーへの融資を不良債権と見なしていたという。しかし、ちょうどコロナ禍であったため、経済環境が改善して受注を積み上げれば、いずれは返済できると捉えていたと打ち明ける。

採算ギリギリの低価格で入札、物価高騰に耐えられず

ホーユーの経営破綻は、同社の企業体質に問題があったことは間違いない。給食業界関係者からは「ホーユーはかなり低価格で案件を獲得していた。とても適正価格ではなかった」という声が上がる。

学校給食において業務委託する場合、競争入札によって採択する事業者が決まる。一般的な給食では、給食事業者は入札案件に対し食事のバラエティーや価格で勝負するなど企画案を提出し、発注側が事業者を選ぶ。

ホーユーの場合、他の給食事業者の10分の1近い価格水準で入札し、落札していたケースもあったようだ。給食業界関係者は「県の担当者が『こんな低価格で大丈夫か』と聞いていたが、ホーユー側は『大丈夫』という回答だった。ただ提供する給食数を計算すると、とてもそんな価格水準で提供できるわけがない」と指摘する。

京都府立農芸高校の担当者も「ホーユーは最初、7人で給食を調理するという話だったが、実際には3〜4人で調理していた」と打ち明ける。ホーユーは、人件費を十分に支払えない水準で落札に至り、人手を減らしてなんとか採算ベースに乗せていた可能性がある。

採算ギリギリのラインで事業を運営する中、新型コロナウイルスの感染拡大による利用者減少や、物価高騰がホーユーの経営を直撃した。同社はそんな外部環境の変化を吸収する余力がなく、経営破綻に至ったと考えられる。

発注側と値上げ交渉し、経営状態の改善を図ることもできたはずだ。だが契約する学校は「ホーユー側からの事前の値上げ交渉はなかった」(京都府立農芸高校の担当者)と打ち明ける。

ホーユーと取引のあった関係者は、「契約締結後の値上げは、できたとしても1食当たり30円程度と聞く。この程度の値上げ幅だと、昨今の物価高騰の影響を吸収できない。それならば、新しい受注を取りに行った方がよいというのが、ホーユーのスタンスだった」と指摘する。

別の業界関係者は、「発注側と受注側が普段から密に話し合っていれば、値上げが可能なケースもある。しかし、ホーユーは低価格で入札に参加していたので、発注側も低価格を前提に採択していた。そのためホーユーは、値上げ交渉をしづらかったのではないか」と語る。

給食事業者の3割が赤字、6割超が業績悪化

ホーユーの企業体質に問題があったのは明らかだが、給食業界にとって氷山の一角である可能性がある。業界全体が業績悪化に直面しているからだ。

帝国データバンクが9月に公表した調査によると、全国の給食事業者の実に3割で2022年度の最終損益が赤字だった。前年度から減益した企業を含めると、全体の6割超が業績悪化しているという。同調査では「給食業務の入札は価格競争に陥りやすい上、食材費や人件費が高騰したとしても契約期間中の価格改定が困難で、採算割れとなる事業者が増えている」と指摘する。

同調査によると、回答が得られた20社の給食事業者のうち15%が、コスト上昇分を「まったく価格転嫁できていない」と回答した。価格転嫁できた企業でも、価格転嫁率は「20%未満」や「50%未満」にとどまる企業が多い。

給食事業は入札方式のため価格競争に陥りやすく、他業界からの参入も増えているため競争が激化している。業界関係者は「『安かろう悪かろう』の低価格入札でも、発注側の行政は採択する。値上げ交渉についてもいい顔をすることはほぼなく、実質価格転嫁は厳しいのが現状だ」と打ち明ける。

実際に値上げ交渉に進んだとしても、市議会などを通して協議する必要がある。値上げについての具体的な理由が求められ、議会の許可を得る必要があるという。このような硬直した仕組みの中、物価高騰分を価格転嫁できず、採算悪化に陥る給食事業者が増えているという構図が浮かび上がる。

「安かろう悪かろう」を採択してきた行政の責任も

こうした給食業界全体の問題について、「安かろう悪かろう」の低価格入札でも採択してきた行政側の責任を問う声も上がる。

日本給食経営管理学会理事である石田裕美氏は、「ホーユーの場合、かなり低価格を提示された時点で、行政側が本当にこの価格で給食を提供できるのかを計算すべきだった」と指摘する。その上で「学校給食を今まで通り出し続けられるかどうか、きちんと考えなくてはならない。コスト上昇のあおりを受けて給食の質が下がる可能性がある。安い給食費は当たり前ではない。いま一度考えなおす必要がある」と続ける。行政側は、給食事業者が経営を維持できるかどうか、適正価格を見極める必要があるだろう。

行政の中には、入札価格以外に「衛生管理」「調理備品などの調達計画」「長期収支計画」「リスク管理」「品質確保」のような項目を設け、総合評価で給食事業者の採択を判断するケースも出てきているという。しかし、総合評価においても入札価格の配点の重み付けが大きいことが懸念点として挙げられる。依然として価格のみでの落札方式を取る行政も多く、総合評価の判断に伴って新たな経費や手間が発生する点が浸透を妨げている。

旧来の給食ビジネスモデルはもはや限界を迎えている。これまでと同様の給食を維持するためには、業界全体で仕組みを変えていく必要がある。

(日経Gooday 原田寧々)

[日経ビジネス電子版 2023年10月2日の記事を再構成]

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