大正製薬HD、日本企業最大のMBO 約7100億円
大正製薬ホールディングス(HD)は24日、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。オーナー家が代表を務める企業がTOB(株式公開買い付け)を実施し、普通株の買い付け総額は約7100億円。日本企業のMBOでは過去最大だ。主力の一般用医薬品(大衆薬)が伸び悩む中、非上場化でネット販売や海外事業を強化し立て直す。
日本企業では、通信教育の「進研ゼミ」などを手掛けるベネッセホールディングスもMBOを発表したばかり。東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)の1倍割れ企業に改善を求めているほか、株主からの還元圧力も強まるなど上場維持のコストが増している。経営の立て直しへMBOで株式の非公開化に動く企業が増えている。
オーナー家の上原茂副社長が代表を務めている企業がTOBを実施する。株式の買い付け期間は27日から2024年1月15日まで。買い付け価格は1株8620円で、大正製薬HD株の24日終値を5割超上回る。TOBが成立すれば上場廃止になる見通し。
大正製薬HDは同日、TOBへの賛同を表明し、株主に応募を推奨すると発表した。筆頭株主の上原記念生命科学財団など同社株を合計で約4割保有するオーナー家はTOBへの応募契約を結んだ。
同社はMBOの背景について市場環境の変化で、大衆薬のネット販売に向けたインフラの整備や、グローバルで展開できる他ブランドの買収など、中長期的な取り組みが必要になるとした。その上で「相応の時間と大きなリスクを伴うもので、株主の全面的な支持を得るのは難しい」とした。
大正製薬HDは9月までに早期退職優遇制度で645人退職した。2024年3月期の連結純利益は前期比45%減の105億円の見通し。医療用医薬品などを扱う医薬事業の縮小に応じた措置としている。同社の医薬事業の売り上げは12年3月期には1000億円超だったが、23年3月期は377億円だった。
東海東京調査センターの赤羽高シニアアナリストは「すでに大正製薬の社名は浸透しており、上場コストと効果が見合わないと判断したのだろう。上場廃止で経営資源を広告や製品価値の向上などに振り向ける判断をしても不思議ではない」と分析する。
大正製薬は1912年創業。63年9月に東証2部に株式を上場。2011年10月にはホールディングスを設立し、東証1部に上場後、22年4月から東証スタンダード市場に上場していた。
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