政府、辺野古埋め立て着工 沖縄県は反発
政府は25日午前、沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部で埋め立て工事に着手した。埋め立て予定地の堤防となる護岸の建設を始めた。1996年に日米両政府が普天間基地の返還で合意して以来、埋め立て工事は初めて。移設に反対する翁長雄志知事は対抗措置を取る構えで、再び国と県の法廷闘争に発展する可能性がある。
菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で「作業の安全に十分に配慮し、着実に早期に工事を進め、普天間基地の一日も早い返還を実現したい」と述べた。「最高裁の判断が下っており懸念材料は全くない」と強調。普天間返還後の跡地利用には「地元の皆さんの要望を伺いながらしっかり対応していきたい」と語った。
防衛省沖縄防衛局は国と県の裁判のため中断していた辺野古沿岸部での海上工事を今年2月に再開した。埋め立て工事の際に海に汚れが拡散するのを防ぐ「汚濁防止膜」を設置する作業を終え、新たな飛行場を囲む堤防となる護岸工事に着手した。原状回復することは難しくなり、移設問題は新たな節目を迎えた。
政府は普天間基地の早期返還を目指して工事を進める方針だが、翁長氏は「あらゆる手段を駆使して辺野古に基地は造らせない」との姿勢を崩しておらず、対抗措置を取る構えだ。
県側は3月末に期限が切れた埋め立て工事に必要な「岩礁破砕許可」を得ないまま政府が工事を進めていると主張。翁長氏は「取り消し」と同様の効果がある埋め立て承認の「撤回」に踏み切る考えを示している。工事差し止め訴訟の提起も検討している。
翁長氏が対抗措置を取った場合、再び国と県の法廷闘争に発展する可能性が高い。同氏は25日午後に記者会見し、今後の方針を説明する。
辺野古への移設を巡っては、2013年12月に仲井真弘多前知事が政府の埋め立て申請を承認した。14年11月の知事選で移設反対を公約に掲げた翁長氏が当選し、前知事による埋め立て承認を取り消した。国と県の法廷闘争に発展し、いったん工事は中断したが、16年12月に最高裁で「承認取り消しは違法」だとする国の勝訴が確定した経緯がある。
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