連合、大手中心から転換 JAM出身の芳野氏が会長に
連合は6日の定期大会で、神津里季生(りきお)会長の後任の新会長に芳野友子氏を選出した。1989年の連合発足以来、女性会長は初めてで中小企業が中心の労組出身者も前例がない。大企業の正社員を中心に賃上げを重視してきた活動からの転換を象徴する。
芳野氏は「新型コロナウイルス禍で組合活動も岐路に立たされている。組合員の声をしっかり受けとめながら運動を前進させたい」とあいさつした。連合副会長と中小メーカーが多い産業別労働組合「JAM」の副会長を兼務してきた。
事務局長には日教組の清水秀行委員長を選出した。毎年の春季労使交渉に関わる立場の事務局長に官公労出身者が就くのも初めてだ。
会長代行はUAゼンセンの松浦昭彦会長、自治労の川本淳委員長の2人が就く。4人の幹部を官公労と民間労組から2人ずつ出すバランスを取った。
連合は長期的な組合員数の減少や組織率の低下に直面する。発足時に800万人といわれた組合員数は2020年におよそ700万人まで減った。連合以外の労組も含めた組織率は雇用者全体の17%にとどまる。
連合の組合員の3分の1は女性が占め、非正規雇用も増えた。教職員ら公務員には働き方の改善が遅れているとの問題意識が強まる。かつて「男性で正社員の組織」だった労組で変化が進む。
経済成長率が低い状況で賃上げというわかりやすい成果は上げにくい。自民党政権が最低賃金の引き上げに動き、連合のお株を奪われる場面も出てきた。
新会長はデジタル化を見据えながら多様な雇用形態の労働環境を整えるという新たな役割を探るのが急務となる。連合やJAMで女性の権利向上に取り組んできた芳野氏が会長に選ばれた背景の一つだ。
定期大会は31日投開票の衆院選や22年夏の参院選へ向けて取り組む方針を確認した。これまで政治との接点が薄かった芳野氏は就任直後の衆院選で、組織の「まとめ役」としての手腕も問われる。
連合内は現在、立憲民主党支持の官公労と国民民主党支持の民間労組という2つの勢力に分かれる。原発問題や安全保障への姿勢でも隔たりがあり、内部からは「かつてなく両者の溝が深い」との声が漏れる。
通常なら7~8月に内定する会長人事は調整がつかず9月下旬までずれ込んだ。最終的に芳野氏に白羽の矢が立ったのはJAM出身という点も大きかった。旧社会党支持と旧民社党支持の労組が統合した労組で、比較的中立な立場にあるからだ。
芳野氏と20年ほどの付き合いがある地方組織の連合東京の杉浦賢次会長は「物おじせずなんでも挑戦する性格だ」と評価する。
連合会長は労働運動だけでなく首相や与党幹部、経済界との関係を深める必要がある。立民からは「芳野氏は深く政治の世界に関わってきたとはいえない。最初は苦労するだろう」との指摘がある。
衆院選と参院選を控え、立民と国民を広く糾合して自公政権に代わる選択肢にするための時間的な猶予はあまりない。
神津氏は衆院選での野党勢力の勝利へ「大きなかたまり」を構築することが不可欠だと強調してきた。芳野氏はこうした「まとめ役に努める」路線を基本的に継承する。
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