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成長力・定着率とも異常なし 今年の新人むしろ有望説

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日経ビジネス電子版

従来型の教育を受けず、不安を抱えたまま入社から半年が経過した今年の新人。だが企業の現場からは「今年の新人はむしろ有望」との声が少なからず上がる。従来型教育を知らない新人たちの健闘は、既存の新人教育法にある疑問を投げかける。

緊急事態宣言の延長が決まり、コロナ禍がますます混迷を深めていた5月上旬、コーヒーチェーン大手のタリーズコーヒージャパンで新入社員研修を担当するトレーニングマネージャー、野口真由氏は不安を抱えていた。心配の種は、5月6日から店舗での実地研修に入った2020年4月入社の新人たちのことだ。

対人業務がほとんどを占める上、コーヒーなどの商品をいれる技術も要求される同社の現場。例年であれば、現場に出る前に4月の入社から1カ月かけて、接客マナーから店舗オペレーション、コーヒーの知識まで座学でみっちり教え込む。今年は、研修内容の大幅な変更を余儀なくされ、集合研修は実質4日間のみ。74人の新入社員は、およそ100項目に及ぶ基礎知識の多くを動画で学ぶことになった。

だが実際に、営業中の店舗に新人たちが散らばると、各地からは意外な報告が入り始める。「在宅研修でも基本動作がしっかりしている」というのだ。

自宅での「ままごと」でスキル磨く

その事実は、10月中旬、店舗での実習成果をお披露目する本社での「オペレーション研修」でも実証された。基礎知識の多くをオンラインで学んだ上、コロナ禍で来店者数が例年より少ないため接客経験も十分でないはずの新人たち。にもかかわらず、彼らの多くは集まった本社スタッフに、キャリアを考えれば十分なスキルを披露した。「感動してしまいました」と野口氏は振り返る。

従来型の新人教育を受けていないのになぜこんなことが起きるのか。

野口氏の謎が解けたのは、現在は横浜ジョイナス店で勤務する新入社員、中野遥さんと話をしたときのことだ。

例年通りの研修が受けられない中でも、新入社員は何とかスキルを身に付けようと自宅で試行錯誤を繰り返していた。中野さんの場合は、コーヒーメーカーや材料の実物がなくても、材料の名前を記した紙片を机に並べて1つ1つの調理工程を確認する「ままごと」(中野さん)のような作業をひたすら積み重ねたという。

同期と肩を並べて練習することはできなかったが、自宅での動画研修は自分が納得いくまで反復できる。「通常の研修を受けられないからこそ、店舗に立った日に何もできないと大変なことになると必死でした」と中野さんは話す。

従来型の新人教育を受けず、入社から半年が経過した今年の新人たち。集合型研修も対面での職場内訓練(OJT)も先輩との生の対話もできないという環境の中、当初は周囲も本人たちも先行きに不安を抱いていた。だが今、企業の現場からは「従来型の教育ができなかったからといって、今年の新人が例年に比べレベルが低いという事実は見られない。むしろ有望」との声が少なからず上がる。

20年3月に大学(4年制)を卒業した新入社員の多くは、バブルが崩壊した日本経済の長期的低迷が鮮明となった1997年に生まれた。北海道拓殖銀行や山一証券が相次ぎ破綻し、実質経済成長率は0%となった年だ。「失われた20年」の中で育ち、11歳になった2008年にはリーマン・ショック、中学生だった11年には東日本大震災を経験するなど「日本の良き時代」を知らない世代でもある。

その特徴の1つは、いわゆる「デジタルネーティブ」であること。10歳になった07年には米アップルが初代「iPhone」を発表。SNS(交流サイト)も動画共有サイトのユーチューブも日常に当たり前にある環境で育ってきた。

ITだけじゃない「デジタルネーティブ」

「しかし実際にはIT(情報技術)のみならず、『なぜ』を考える癖が既に身に付いている」

今年の新入社員の印象についてこう話すのはそごう・西武の人事部教育推進担当、小畑光代氏だ。同社もまた、コロナ禍により新人育成プログラムの変更を余儀なくされた企業の1つ。入社後は5月中旬まで集合型の研修や売り場での実習に取り組んでもらい、そこから現場に配属するのがこれまでの流れだったが、今年は全面的にオンライン研修に切り替わった。

だが、試用期間の終了時に設定している業務工程をマニュアル通りに進められるか確認する試験には、新入社員149人全員が合格。配属先の店舗からも「知識の土台がしっかりしていて、のみ込みが早い」との声が届くという。

現在は西武池袋本店の営業1部化粧品担当化粧品2係で働く坂本千聡さんもそんな新人の1人。「最初はオンライン研修で学んだ知識を実践で生かせるのか不安だったが、思った以上に適応できている気がする。まだまだ足りないところはたくさんありますが、今後も頑張りたい」と抱負を述べる。

周囲の心配をよそに健闘が伝えられる今年の新入社員。これは特定の企業だけの現象なのだろうか。実は、「20年4月入社組は現時点で前の世代に比べ何ら遜色ない」という声は、専門家の間からも上がっている。

「全体として素直で真面目な子が多く、確かに多くがコロナ禍で既定の教育を受けられなかったことに不安を持っている。『入社から半年何もできなくてもビジネスパーソンとして致命的な問題にならない』と話しても、そう思えない人が多い」

こう話すのは、新入社員研修の開発を長年担当するリクルートマネジメントソリューションズの主任研究員、桑原正義氏。今年の新人とも多数面識を持つ桑原氏は、本人たちの自己評価の低さに反し、彼らは総じて既に様々な強みを持つ人材が目立つと指摘する。

「まずはやはりITスキル。オンライン会議で画面共有したりグーグルスライドで同時編集したりといった作業はすぐにできるし、できない人も説明すると直ちに理解する。また、コラボレーション能力も高く、自分の得た情報を他者とシェアして学び合うのも得意。分からないことに対する検索力もある。異例の環境で社会に出た経験がむしろ生きて、先の見えない時代により柔軟に対応できる人材になるかもしれない」(桑原氏)

産労総合研究所(東京・千代田)で新社会人の採用・育成研究会事務局の白ヶ澤健一氏も「初めから何もかもオンラインという異常事態が今年の新入社員の環境適応能力を高める可能性がある」と指摘する。「対面の営業力はともかくリモートワークへの順応性は高く、ウェブ商談の経験値は現時点で相当高い」と20年入社組を評価するのは人材サービス大手、パーソルキャリア(東京・千代田)の組織開発統括部に勤める小林亜季氏だ。

離職率にも大きな異常見られず

読者の中には、入社早々テレワーク生活を強いられた新人の中には、既に辞めてしまった人も多いのではと思う人もいるかもしれない。だがこれについても「現時点で、今年の新人に転職希望者が例年より多いという話は聞かない」とビズリーチ(東京・渋谷)広報の寛司絢子氏。エン・ジャパンで新卒学生向けスカウトサービス『iroots』事業部長を務める近藤翔太氏も「取引先の8割から離職率は例年と同様との声が入っている」と話す。

外資系IT大手の新入社員Aさんの場合、オンライン研修中、数人のチームで課題解決などに取り組んでいたが、そのうち1人が既に退職した。しかしAさんは「研修中にある程度の退職者が出るのは例年と変わらないと聞いている。チームになじめず研修にもついて行けていない感じだったので、コロナ禍とは関係ないと思う」と証言する。

前例のない状況の下、従来型の新人教育をほとんど受けないまま半年が経過したにもかかわらず、成長力、定着率とも例年に比べ著しい異常は見られず、評判も悪くない今年の新人たち。

オンラインでの名刺研修に最初は戸惑いを覚えた新生銀行の藪隆平さんはその後、営業第二部に配属。現在は、融資先企業の決算状況の分析が主な業務だ。現時点では融資先の顧客と直接営業の場に立った経験が少ないが、「対面営業のスキルはともかく、企業分析や文書作成の部分は自分でも少しずつ板についてきたと思っている」と前向きに話す。

同じ新生銀行の新入行員で、融資のための事務作業を行うシンジケーション部に配属された池田遥香さんは「研修の最初の頃は不安だらけだったが、やってみるとマニュアルに沿った業務フローを覚える上ではオンラインの方がよかったと思う」と振り返る。

対面で先輩の隣に座って教わるよりも、画面共有機能を使って教わる方が実践的で、復習も楽だからだ。新生銀行グループ本社グループ人事部の兒玉克之マネージャーも「誰も経験したことがない働き方に入社早々チャレンジしているという時点で今年の新人は合格点。上の世代に新しい視点をもたらしてくれることを期待している」と高評価だ。

新人育成プログラムを大幅に変更したサイボウズ。オンライン研修では受講者が受け身になり、一方通行の教育になるのではないかという危惧もあっただろう。

しかし蓋を開けると、動画を視聴しながらリアルタイムで質問したり、先輩社員とチャットやオンライン掲示板で議論を戦わせたりするなど、多くの新人が積極性を見せた。会場に新人以外の中途採用の参加者らがいる例年の対面研修よりも活気づく場面が随所に見られたという。「20年度入社組の『リモート慣れ』には驚かされた」と人事本部採用育成部の小野加寿也氏は話す。

「ビジネスマナーなどは十分でなく、現場で初めて知ることも多い」と話すのは現在、同社の営業部門で働く新人、鈴木佳苗さん。それでも「『現場でしか経験できないこと』は実践を通じて身に付けていきたい」と抱負を語る。

オンライン営業のOJTで「3カ月で100万円以上の広告を出してくれる顧客を1人8件獲得する」という課題に挑戦したLINEの新人、古川勲さんは最終的に目標を達成した。同じOJTにトライした同期は23人いたが、半数はゴールしたという。

最初から視線が世界を向く

3カ月で100万円以上の広告費を支出できる企業は、同社のウェビナーに参加した企業の中でも10社に1社あるかないか。コロナ禍という逆風下で新入社員たちが5割の確率で難題をクリアできた理由について、古川さんの育成担当、木村魁氏はこう解説する。

「去年までの新人たちは対面型の営業OJTだったこともあって、まず東京近郊のお客様から発掘していた。それに対し、研修からオンラインだった古川さんたちは最初から全国、人によっては海外からクライアントを探した。発想が根本的に違う」

もちろん、新人たちの中には「例年に比べて自分の成長は遅いのではないか」と悩んでいる人もいる。前出の外資系IT大手のAさんもその1人だ。Aさんは自分の成長を阻害しているのは「テレワークで出社できないこと」だと考えている。

「出社すれば情報が入る。先輩たちが話している会話やキーフレーズに日常的に触れることで、研修で学んだことが初めて生きた知識になる。業界がどんな課題を抱え、会社がどんな方向に向かっているかも正確に理解できる。この会社を選んだのは自分より優秀な方と仕事をしたかったから。今の環境ではモチベーションが上がらず、成長しづらいと感じる」。入社半年でここまで考えられる人材の、どこが成長していないのだろうか。

以上、20年4月入社の新入社員とその先輩、専門家を取材しての結論は以下の通りになる。「今年の新人たちの多くは集合型研修、対面でのOJT、先輩との対話といった従来型の新人教育をほとんど体験していないが、例年通り、普通に育っている可能性が高い」――。

となれば、上の世代の中からは当然、こんな疑問が出てくるはずだ。

じゃあ、多くの企業が今まで多大なコストと手間をかけて実施し、自分たちが受けさせられた新人教育っていったい何だったの?と。

(日経ビジネス 神田啓晴)

[日経ビジネス電子版2020年10月27日の記事を再構成]

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