「あおり運転」摘発、9割が映像あり 重要証拠に
警察庁は25日、あおり運転を「妨害運転」と規定して厳罰化した改正道路交通法(2020年6月30日施行)の摘発状況を公表した。20年末までの半年に摘発した計58件のうち、9割超でドライブレコーダーの映像が残されていた。あおり運転は車の一連の動きを確認する必要があり、同庁はレコーダーの設置を呼びかけている。
警察庁幹部によると、あおり運転の立件には「通行を妨害する意思」の立証が不可欠で、事件の多くは被害者や目撃者からの通報が端緒となっている。20年6月の改正道交法施行にあたり、同庁は全国の警察に「ドライブレコーダーは妨害運転等の悪質・危険な運転行為の抑止に有効」として、ドライバーに設置を呼びかけるよう通達を出した。
20年7月、東京都府中市の中央自動車道で起きたあおり運転事件では被害男性の車に搭載されていたドライブレコーダーの映像が決め手となり、摘発に至った。
隣の追い越し車線を数十台の車が高速で通過するなか、男は約1分間にわたって被害男性の車の前に停車し、その後も時速10キロ以下の低速走行で妨害運転を続けていた。
その模様はドライブレコーダーで記録され、警視庁はあおり運転の中でも罰則の重い「著しい交通の危険」があったと判断。11月に男を逮捕した。捜査幹部は「状況が継続的に映っているドライブレコーダーは極めて重要な証拠となった」と振り返る。
警察庁によると、20年に「著しい交通の危険」があったとして摘発したケースは計17件あった。高速道路上ではけがの有無にかかわらず、大事故につながる可能性があるため、20年に摘発した「高速道路での駐停車」は5件全てで適用した。
あおり運転の容疑者は割り込みをされたことにいらだつなど、感情のコントロールができていないケースが多い。同庁幹部は「あおり運転の防止に特効薬はなく、免許更新時の講習などの場で地道に広報・啓発していくしかない」と話す。
警察はこれまで、前の車との距離を詰めすぎた場合に道交法違反の車間距離不保持容疑などを適用してあおり運転を取り締まってきた。19年の取り締まり件数は前年比16%増の1万5065件だったが、20年は一転して同13%減の1万3062件。特に同年後半に大きく減少しており、警察庁幹部は「法改正による厳罰化が功を奏したのではないか」とみている。