「ドラゴンで観光振興」に待った インドネシアで論争
【ジャカルタ=地曳航也】インドネシア国内に生息する希少動物「コモドドラゴン」を活用した同国政府の観光振興策に環境保護団体などが待ったをかけ始めた。コモドドラゴンを見やすくする専用デッキなどを国内の生息地に建設する計画だが、SNS(交流サイト)では「生態系を壊すジュラシック・パークだ」との批判が広がる。
計画への疑念は、10月23日に写真共有アプリの「インスタグラム」に投稿された1枚の写真をきっかけに拡大した。建設現場で1匹のコモドドラゴンが大型トラックに対峙している場面をとらえた。SNS上では1989年の天安門事件時、中国人民解放軍の戦車に立ち向かった男性の映像になぞらえる声もある。
ジョコ大統領は観光振興を成長戦略の一角に位置付ける。野生のコモドドラゴンは貴重な観光資源だが、観光客が観賞するための施設が整っていないとの指摘がある。政府は中部のリンチャ島に約700億ルピア(約5億円)をかけて船着き場の整備や見物用のデッキの建設を進めている。
地元紙によると、環境保護団体「ワルヒ」のウムブ・ウラン氏は「この写真はコモドドラゴンが大規模プロジェクトで不便を強いられている証拠だ」と指摘する。政府も建設は自然保護の規制に沿っていると譲らず、論争は当面続きそうだ。