北陸電力、再生エネ育成課題 政府の温暖化ガスゼロ方針
政府が温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする方針を打ち出した。北陸3県では発電量の6割近くを化石燃料に頼る北陸電力の対応に注目が集まる。水力発電に強みを持つが、一層の削減には再生可能エネルギー分野の育成が欠かせない。志賀原子力発電所(石川県志賀町)の再稼働の動向も焦点だ。
金井豊社長は29日の決算記者会見で、政府の方針について「50年時点の技術や電力需要が見通せない」としたうえで「いかに二酸化炭素(CO2)を減らすかは大きな課題で、今から取り組むべき問題」と話した。今後、社内でアイデアを出していくという。
同社の19年度の1キロワット時当たりのCO2排出量(キログラム)を示す「排出係数」は0.497だった。大手電力会社10社の中では中位にある。上位は原子力発電所が稼働する関西電力、九州電力、四国電力が占める。化石燃料の中でも排出量が少ない液化天然ガス(LNG)発電比率の高い中部電力ミライズと東京電力エナジーパートナーが続く。
北陸電は31年3月期までの長期ビジョンで、再生可能エネによる発電量を19年3月期比で3割増やす計画を掲げた。ビジョンを策定した19年当時、政府の目標は「50年までに80%削減」だった。前提が変わったため、もう一歩踏み込んだ取り組みが求められそうだ。
水力など再生可能エネ分野が中心になる。関連会社の黒部川電力(東京・千代田)が22年、新潟県糸魚川市で2万8000キロワットの発電能力がある水力発電所を稼働させる。福井県あわら市の沖合では、中部電力などと共同で最大出力20万キロワットの洋上風力発電所を設けるための調査を続けている。
政府は低効率の石炭火力発電所も休廃止する方針だ。北陸電の石炭火力のうち、富山新港火力発電所(富山県射水市)の石炭1.2号機、敦賀火力発電所の1号機(福井県敦賀市)が低効率に区分される。
金井社長は新港の石炭1号機を25年3月期に廃止し、敦賀1号機は高効率設備と遜色ない実力があるとして廃止の必要はないと従来通りの説明をした。新港火力2号機の扱いは白紙としているが、効率が高まるバイオマスの混燃も含めて社内で対応を議論するという。
発電時にCO2を排出しない原発もカギを握る。志賀原発は11年から停止しており、現在は同社が申請した2号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査会合が進む。敷地内にある断層の活動性の有無に関して、2日の会合では評価の対象とする断層を決定した。
志賀原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)を使う東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機は2月に規制委の審査に合格し、再稼働に向けた地元自治体の同意の流れが固まりつつある。BWRは東日本大震災で事故を起こした福島第1原子力発電所が採用しており、大震災後に再稼働した例はない。
4~9月期決算、純利益60%増
北陸電力が29日発表した2020年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比60%増の172億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う企業活動の停滞で産業用の電力需要は減ったが、燃料費が低下して利益を押し上げた。
売上高は1%減の3074億円だった。外出自粛の影響で家庭向けの電力販売は増えたが、店舗や工場向けが落ち込んだ。卸電力取引所などへの販売は4割増えた。新型コロナの業績への影響については「売上高で60億円程度の下押し要因になった」(金井豊社長)とし、今後経費の削減などに取り組むという。
21年3月期通期の業績予想の公表は見送った。 (伊地知将史)