JR東海、民営化後初の最終赤字1920億円 21年3月期
JR大手の業績が苦境に陥っている。JR東海は28日、2021年3月期の連結最終損益が1920億円の赤字(前期は3978億円の黒字)になりそうだと発表した。最終赤字は1987年の民営化後初めて。JR東日本も20年4~9月期に初の最終赤字に転落した。新型コロナウイルス禍で外出自粛が広がり、新幹線や特急の利用が落ち込んでいる。需要の低迷は長期化しそうだ。
「感染防止の影響が大きく、大変厳しい決算、業績見通しとなった」。28日、名古屋市内で記者会見したJR東海の金子慎社長は厳しい表情で語った。
今期の売上高は8630億円と53%落ち込む。新幹線が9割程度を占める運輸収入が足元から年末まで18年度比6割減の水準で推移する。来年3月にかけて4割減に回復するものの、コロナ前までは戻りきらない。
赤字を減らすため、コストと設備投資をグループで680億円削減する。不要不急の車両修繕や開発案件などを先送りにする。5~10月に実施している役員報酬の10%削減を、21年1月まで延長する方針も明らかにした。金子社長は「来年度は黒字にしたい」と強調する。
JR東は28日、20年4~9月期決算で最終損益が2643億円の赤字(前年同期は1885億円の黒字)になったと発表した。4~9月期の最終赤字は初めて。赤石良治常務は「初めての赤字で重大なことだと受け止めている」と語る。
すでに公表済みの21年3月期の最終損益は4180億円の赤字(前期は1984億円の黒字)になる見通しだ。通期の最終赤字も初めてだ。下期の鉄道運輸収入は関東圏の在来線で18%減、新幹線で57%減と落ち込みが続く。
JR東も従業員賞与や修繕費、維持更新投資など固定費と投資を合計で1560億円削減する。5~10月に実施している役員報酬の自主返上を、21年3月まで延長することも明らかにした。赤石常務は「構造改革に取り組み、来年度は黒字化する」と強調する。
ただ、22年3月期以降も需要は戻りきらない見通しだ。通勤や出張などの需要減に加え、インバウンド(訪日客)需要の回復が不透明なためだ。
JR東は来期以降の鉄道運輸収入が19年3月期と比べ、8割強の水準で推移するとみる。内訳は定期券と在来線が85%、新幹線は80%という。来期以降の鉄道収入が想定通りならば、現在の収益構造では鉄道でほとんど利益が出ない計算だ。
今後はコロナ前から赤字だった地方在来線のテコ入れや運賃改定などが焦点になる。すでにJR東は終電繰り上げによる保守作業の効率化や通勤時間帯の本数削減を打ち出している。一段のコスト削減を進めるには、消費者の理解をどう得るかが課題となる。