中国自動車大手の吉利、原発に出資 米が警戒も
【北京=多部田俊輔】中国民営自動車最大手の浙江吉利控股集団が原子力発電所の運営会社に出資する。中国の原発運営に民営企業が参画するのは初めて。吉利は人工衛星分野にも参入するなど多角化を進めている。原発運営会社はトランプ米政権による事実上の禁輸措置の対象になっており、吉利も警戒対象となる可能性もある。
李克強(リー・クォーチャン)首相が2日に開いた国務院(政府)常務会議で建設を許可した原発2カ所のうち、浙江三澳原発の運営会社に吉利が出資する。出資比率は中国国有原発大手の中国広核集団が46%、浙江省の国有電力会社が34%などで、吉利は2%にとどまる。
中国政府は2013年に通信やエネルギーなどの国有企業に民間資本を導入する方針を打ち出した。政府は過半出資を維持し経営権を手放さないものの、民間企業のような経営の効率化を狙う仕組みで、今回は浙江省に本拠地を置く吉利に白羽の矢が立った。
吉利の李書福董事長は国会議員に相当する全国人民代表大会(全人代)代表を務める。習近平(シー・ジンピン)国家主席が浙江省トップなどを務めた際に親交を結び、スウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーの買収でも習氏の支援を得たとされる。
共産党や政府との関係が深いことが原発への出資につながったが、米国から警戒されるリスクも伴いそうだ。米商務省は19年、米国の原子力技術を軍事転用しているとして中国広核集団を事実上の禁輸リストに加えている。
国務院が許可を出した2カ所は浙江三澳原発の1期プロジェクト2基のほか、海南昌江原発2期プロジェクトの2基。投資額は合計で700億元(約1兆1千億円)を超える。海外の技術をベースに独自の改良を加えて独自開発したとする「華竜1号」を採用し、2025年の稼働をめざす。
3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が発足しました。習政権では習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占め、序列24位以内の政治局員でも約7割が該当するとみられます。権力の一極集中を進める習政権の最新ニュースや解説をまとめました。
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