南シナ海「深刻な事案に懸念」 ASEAN首脳が声明
【ハノイ=大西智也】東南アジア諸国連合(ASEAN)は27日、26日にオンラインで開催した首脳会議の議長声明を発表した。一部の加盟国と中国が領有権を争う南シナ海問題について「最近の事情や深刻な事案に懸念が示された」と盛り込んだ。
2019年11月にタイのバンコクで開いた前回の首脳会議の議長声明では「いくつかの懸念に留意する」としていたが、表現をやや強めた。27日に発表した議長声明は「上空飛行の自由」の重要性も明記し、将来の防空識別圏の設定を否定しない中国をけん制した。
南シナ海問題ではASEAN内部で温度差がある。中国から支援を多く受けるカンボジアやラオスが中国寄りなのに対して、ベトナムは「反中」的な立場。声明内容は草案段階とほぼ変わらず、議長国として内容を主導できるベトナムの立場が反映された格好だ。
南シナ海では中国が4月中旬に西沙(英語名パラセル)諸島や南沙(同スプラトリー)諸島を管轄する行政区を新設すると発表。ほかにも中国の船がベトナムの漁船を沈没させたり、フィリピン海軍の艦船が中国側からレーダー照射を受けたりする事案が発生している。
議長声明では日本を含む計16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)にも言及。離脱を示唆しているインドにも触れたうえで「2020年末に署名することを期待する」と記した。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大でASEANの景気も後退を余儀なくされている。首脳会議では経済の再始動に向けて、企業関係者らの往来確保に努めることを確認した。議長声明では「ASEANの協力を強化し、経済と社会の混乱を最小限に抑える」とした。
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