大蘇ダム、対策後も漏水 農業用水「不足の懸念」
大分、熊本両県に農業用水を供給するための国営大蘇ダム(熊本県産山村)で漏水が続き、対策工事を終えて4月に供用を始めた後も大量に水漏れしていることが、管轄する九州農政局への取材で分かった。漏水は1日当たりの量でみると同局の想定の範囲内といい「現時点で影響はないが、多い状態が続けば農業用水が不足する懸念がある」と説明している。
九州農政局によると、想定する漏水量は1日当たり2千~3万トン程度。これに対し秋以降は同1万5千~2万トン程度と量が多い日が続いている。山肌から地盤にしみ込んでいるとみており、水位が下がる来春以降に詳細を調べる。決壊の恐れはないとしている。
大蘇ダムは両県の1865ヘクタールの農地に水を供給する目的で1979年度に事業に着手。2005年に貯水試験を始めた際、漏水によって必要な水量を確保できないことが判明した。国は対策の補修工事をし、計画を3回変更した。
11月25日に完成式典があったが、熊本県阿蘇市の佐藤義興市長らは事前に漏水の連絡を受け欠席。同市は「農業関係者の落胆は大きい。もろ手を挙げて完成を喜ぶ状況ではない」と理由を説明した。九州農政局は「地元に心配をかけており、丁寧な説明に努めたい」とコメントした。〔共同〕