東京五輪、中止回避へ簡素化案 行進取りやめも視野
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2021年に延期された東京五輪・パラリンピックについて、東京都や大会組織委員会が大会の簡素化を検討している。入場行進を取りやめるほか、販売チケットを減らし観客席の間隔を空けるといった案があがる。感染対策の徹底で「大会中止」の事態を避けたい考えだ。
東京都の小池百合子知事は4日、都庁内で「五輪開催には国民の共感が必要だ。合理化、簡素化すべきところは進めていく」と述べた。組織委の森喜朗会長とも会談し、合理化を進める方針で一致した。
都と組織委は既に国際オリンピック委員会(IOC)と協議している。「アスリートファースト」を掲げるIOCは競技自体への影響を望んでおらず、簡素化は式典などが主な対象となる。
選手が一堂に会する開閉会式での入場行進の取りやめのほか、各国の来賓など参加者数の絞り込み、セレモニーの縮小、聖火リレーの日程短縮などを検討する。開閉会式は各3時間の予定だが、時間を短縮し選手の感染リスクを抑える狙いがある。
観客席の削減も検討しており、座席の間隔を空けるなど観客同士の距離を取ることで感染対策につなげる。会場ごとにサーモグラフィーを設置した観客の体温確認や、入場時の手指消毒を求める案も出ている。
五輪のチケットは900万枚超が販売予定で、既に448万枚が事前抽選などで販売済みだ。海外分やスポンサー分を除いた残り数百万枚は、大会前に先着順などで販売される予定だったが「残りは売り出さない可能性がある」(大会幹部)。
大会には200を超える国・地域から1万人超の選手の参加が見込まれている。組織委などは感染対策の柱として、PCR検査のため選手や関係者に前倒しして入国してもらうことを検討する。選手が競技以外の目的で選手村(東京・中央)から外出することを制限する案もある。
五輪開催を巡っては、IOCのバッハ会長が英BBCのインタビューで、21年夏に開催できない場合は中止される、との見解を示している。日本側は選手が満席のスタジアムで競技を行う「完全な形」での開催を目指す一方で、次善の策として大会の簡素化も選択肢の一つとした。
感染防止への備えを前面に打ち出すことで確実な開催にこぎ着けたい考えだ。組織委の高谷正哲スポークスパーソンは4日、運営面の具体的な感染対策の検討を秋以降に始める方針を明らかにした。万全のウイルス対策やPCR検査体制をいかに整えるかなど解決すべき課題は少なくない。