台湾UMCが米と和解 中国企業への半導体技術漏洩
【台北=中村裕】台湾半導体大手の聯華電子(UMC)は22日、米企業の半導体技術を中国企業に無断で移転したとされる問題で、同社が罪を全面的に認め、米司法省と近く司法取引が正式に成立すると発表した。6千万ドル(約63億円)を支払うことで合意する。
近く開廷する裁判で正式決定し、和解する見込み。当初、罰金は最大200億ドルにものぼるとされた。大幅に減額された形になる。
問題となっていたのは米半導体大手のマイクロン・テクノロジーが保有する技術だ。データの一時保存用のメモリー半導体、DRAMに使う。
マイクロンは2017年、UMCに転職した3人の元社員が会社と組織ぐるみでマイクロンの企業秘密を盗み、中国企業の福建省晋華集成電路(JHICC)に渡していたと訴えた。これを受け米連邦大陪審は18年11月、産業スパイの罪でUMCと中国企業を起訴した。
この件は、米中ハイテク摩擦の象徴事例として注目されてきた。JHICCは中国の国策企業として16年に突然設立された企業だ。半導体の中でも特にDRAMを政府支援で伸ばすはずだった。DRAMはパソコンのほか最新兵器にも欠かせない。中国としては米国に対抗する上で国産化が欠かせなかった。
しかし、DRAMは韓国サムスン電子、韓国SKハイニックス、マイクロンの3社が特許を含め市場をほぼ独占する。
その状況下、JHICCが考えたのが提携先の台湾のUMCを利用することだった。UMCも大手とはいえ、同業の半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に後れを取り、当時は中国市場の開拓が最重要課題だった。そのためDRAMなどの技術移転で中国側が望む形でJHICCとうまく手を組めば、見返りが大きいと考えたとされる。実際、現在でもUMCの顧客は中国メーカーが多い。
今回の和解の背景について、大手の台湾経済研究院で半導体アナリストを務める劉佩真氏は「JHICCの事業は既に中止に追い込まれ、米国が中国のDRAM生産を阻止する当初の目的は達成された」と指摘した。
そのうえで「米国は今、台湾の半導体技術の重要性を再認識し、協力関係を深めたいと思っているので、台湾側への誠意を見せる意味があり、今回うまく話がまとまった」と述べた。
UMCの広報責任者は22日、日本経済新聞の取材に対し「早期の正式決着を望んでいる」とだけコメントした。
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