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サウジ、欧州向け原油8ドル値引き ロシアたたきに価格戦争

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石油輸出国機構(OPEC)の盟主サウジアラビアが主導した減産の強化に、非加盟の主要産油国ロシアが同意せず、「OPECプラス」の協調体制は崩壊した。サウジが一転して増産に動いたため、原油価格は暴落し、石油市場の混乱は世界の株価急落の一因にもなっている。サウジはなぜ、心変わりしたのか。石油市場の環境はどう変わりつつあるのだろうか。

OPECプラスを決裂させたのはロシアだが、「価格戦争」の引き金を引いたのはサウジだ。サウジは協調減産と自主的な減産を合わせて日量970万バレルまで生産を減らしていたが、これをやめ、4月には原油供給量を日量1230万バレルに増やす方針を表明した。さらに原油生産能力を日量1300万バレルに拡大する考えも打ち出した。サウジこの大増産計画に加え、サウジが極端な値引きを発表した影響も大きい。

原油の取引には、1回ごとの売買であるスポット取引と、顧客が一定期間、継続的に原油を購入する長期契約に基づいた取引の2通りがある。

長期契約では、産油国側が毎月、自国の原油の油種ごとに輸出先の市場の指標となる価格に上乗せする調整金を提示している。サウジの国営石油会社サウジアラムコが7日に発表した4月船積み分の調整金に、世界の石油関係者は絶句した。

サウジの代表的な油種、アラブ・ライトの場合、日本などアジア向けの3月積みの調整金は、指標となるオマーン産とドバイ産のスポット価格の平均値プラス2.9ドルという高めの設定だった。ところが、4月積みは、マイナス3.1ドルに設定された。前月比の値引き幅は6ドルだ。

注目すべきは、欧州向けの値引きだ。ロシアの主要な輸出先でもある北西欧州向けの4月の調整金は、前月より8ドル引き下げる空前のディスカウントになった。サウジの狙いは欧州市場でロシアからシェアを奪うことだろう。指標となる北海ブレントの16日の終値は1バレル30ドル台。調整金を加えると足元の販売価格は22ドル台になる。アラムコは、ロシアの隣国ベラルーシなどにも売り込みをかけているという。

ロシアとの協調からロシアとの対抗へ――。サウジの政策の大転換は5日のOPEC総会と6日のOPECプラス閣僚会合の間に起きたようだ。OPEC総会は、4~6月の協調減産幅を3月までより日量150万バレルほど拡大することで合意し、ロシアなどが加わるOPECプラス会合に提案するという声明を出した。だが、5日の夜遅く、減産幅の拡大を2020年末まで続けるという別のOPEC声明が出た。ロシアは減産の強化も長期化も嫌っていた。5日夜にOPECプラスの決裂が決定的になった。

米石油業界紙インターナショナル・オイル・デーリーなどは、サウジの指導者(ムハンマド皇太子を指すとみられる)がOPEC総会後、アブドルアジズ・エネルギー相に電話で「もっと強烈な減産強化策を出せ。ロシアが反対したら、こちらの減産も打ち止めにする」と命じたと報じた。

皇太子は、なぜそんな指令を出したのか。ぎりぎりまでロシアとの妥協点を探ろうとし、5日には同国のプーチン大統領に電話をかけた。だが、ロシア側は多忙を理由に電話協議を断ったという情報が流れている。この日はプーチン氏がシリア北西部イドリブ県での停戦を巡り、訪ロしたエルドアン・トルコ大統領と6時間あまりも直接会談をしていた。シリアのアサド政権との調整も含め、プーチン氏は確かに多忙だっただろう。だが、同氏の政治判断でロシアが歩み寄ると期待していた皇太子は、電話協議が実現しなかったことに激怒したともいわれる。

ロシアが減産強化を渋った大きな理由は、これ以上、世界の石油市場でのシェアを低下させたくなかったからだ。それなら、サウジのほうからシェア競争を仕掛け、ロシアに思い知らせてやれ、勝つのは生産コストが低いサウジのほうだ――皇太子がそういう発想になった可能性はある。

5日から6日にかけては、サウジ国内で皇太子に批判的な叔父のアハマド王子、いとこのムハンマド前皇太子ら有力王族が拘束されたといわれる。王位継承に向け、王家の中の批判勢力の排除に踏み切り、皇太子の気分が高揚していたのかもしれない。

ほかの産油国も相次ぎ、増産を表明している。

アラブ首長国連邦(UAE)が、真っ先にサウジに追随する方針を示し、クウェートなども供給を増やす方向だ。ロシア側では、協調減産を最も嫌っていた国営石油会社最大手ロスネフチが増産に意欲をみせる。同社には、石油の需要が比較的多いうちに、北極圏の石油資源開発を始めたいという思惑もある。

サウジの値引きに対抗し、ほかの産油国も調整金の引き下げに動きつつある。価格競争が激化すると、米国のシェールオイル開発も打撃を受ける。シェール開発の損益分岐点は10年代に大幅に下がったが、1バレル40ドルを下回る価格が続くと、大半のシェール開発事業は赤字になる。原油価格の暴落でキャッシュフローが減っているので、低格付け債などでお金を借り入れ、資源開発を進めてきた企業の信用リスクも懸念されるようになった。

価格急落から若干のタイムラグを経て、シェールオイル生産にもブレーキがかかるだろう。米政府のエネルギー情報局(EIA)は11日に発表した短期予測で、四半期ベースでは7~9月期から米国の原油生産量が減少に転じると指摘した。

価格が下がれば石油の需要は増えるのか。以前なら、石油価格の下落→需要の回復→価格の回復というサイクルが見込めたが、気候変動への対応が大きな課題になったいまでは、値下がりが消費増に直結するとは断言できない。14年から16年にかけての価格下落局面では、石油以外の資源も含めて開発投資が激減したことが世界の成長を抑制する一因になった。

現状をみれば、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、世界規模でヒトの移動やイベントの開催が制限され、商業施設などの一時閉鎖も相次ぐ。石油の価格が下がっても消費は抑えられる。国際エネルギー機関(IEA)は9日、20年の世界の石油需要が前年より減ると予想した。

原油価格の低迷は長引きそうだ。EIAは、4~6月期が四半期ベースでの原油価格の底で、北海ブレントが平均で1バレル36ドル台、米国産WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が31ドル台と予測し、20年後半から徐々に回復に向かうシナリオを描く。だが、実際にどういったペースで価格が回復するかは新型コロナをいつごろ抑え込めるかにかかる。

サウジが引き金を引いた価格戦争とシェア争いは「消耗戦」だ。ロシアも米国も打撃を受けるが、これら3大産油国で財政や経済の耐久力が最も低いのはサウジだ。20年予算(国内総生産の6%強の財政赤字を見込む)の前提となる原油価格をサウジの投資銀行ジャドワ・インベストメントは「北海ブレントで1バレル60ドル程度」と推計する。

ロシアが予算編成の前提とする原油価格は42ドル台だとプーチン氏が説明した。60ドルでも巨額の赤字を出すサウジの財政は、原油価格が30ドル前後になっても持ちこたえることができるのか。

サウジアラムコのアミン・ナセル最高経営責任者(CEO)は16日、19年の生産コストは1バレル2.8ドルだったと説明し、30ドル程度の価格でも問題ないと自信を示した。確かに生産コストは低いが、サウジは石油収入への依存度がロシアより高く、価格競争の政治的、社会的なコストは極めて高い。綿密なゲームプランがないまま「価格戦争」を始めたようにみえるサウジが、どこまで経済的に耐えられるかが、原油価格の行方を左右する。

(客員編集委員 脇祐三)

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