中国3月の新車販売43%減、新型コロナの影響続く
【北京=多部田俊輔】中国汽車工業協会は10日、3月の新車販売台数が前年同月比43.3%減の143万台だったと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で過去最大の減少幅となった2月(79.1%)から回復したものの、3月中旬まで外出制限などで生産や販売に支障があり、2カ月連続の大幅減となった。直近の自動車生産は前年水準の75%まで回復した。
新車販売台数が前年実績を下回るのは21カ月連続。ライドシェア事業を手掛ける企業向けが多い電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの新エネルギー車は53.2%減。ライドシェア事業の低迷で落ち込み幅がより大きかった。
4月の販売は「前年比マイナスは続くが、減少幅は1~2割まで縮小する」(中国大手幹部)との見方が多い。通勤に安心・安全を求め、地下鉄などよりもマイカーを利用しようとする消費者の意欲が高まっている。政府の補助金も購入を後押しするとみられる。
国内販売の約96%を占める大手23社の生産状況をみると、上海汽車集団傘下の1工場を除いてすべてが稼働を再開。従業員のうち86%が職場に復帰したという。中国政府によると、販売店の受注も正常時の65%の水準まで回復した。
日米欧の自動車大手も中国での販売に力を入れる。中国トップの独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長が3月26日の独テレビ番組で「現在、中国以外では売り上げが立っていない」と明らかにしたように欧米などの販売が低迷している。日系大手幹部は「中国販売の回復を期待する日本の本社のプレッシャーは大きい」と漏らす。
2020年通年の需要見通しについて同協会は「今年後半には前年水準を回復する」との見方を示したが、「不透明な状況だ」(中国の調査会社)。外出できなかった消費者が販売店に押し寄せた「反動増」は5月以降見込めない。
世界的な感染拡大で輸出も含めて中国全体の景気の先行きは見通しにくい。中国政府のテコ入れ策拡大を期待する声が高まる。
同協会によると、すでに約20の地方政府で新車販売や排ガス規制対応車への買い替えなどへの補助金や、渋滞緩和のために実施していたナンバープレートの発給制限の緩和、ピックアップトラックの通行規制の緩和などを表明した。サービス分野も含めると、自動車産業は中国の国内総生産(GDP)の約1割を占めるとされるだけに、その行方が中国経済の回復を左右する。