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1人14万円の現金支給 香港、新型コロナで経済対策

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【香港=木原雄士】香港政府は26日、2020年度(20年4月~21年3月)の予算案を発表した。18歳以上の市民1人あたり1万香港ドル(約14万円)の現金支給を柱とする総額1200億香港ドルの経済対策を盛り込んだ。大規模デモと新型コロナウイルスによる経済低迷を踏まえ、市民の不満解消を狙う。20年度の財政赤字は1997年の中国返還後、最大になる見通しだ。

陳茂波(ポール・チャン)財政官は26日に立法会(議会)で演説し「新型コロナウイルスの急速な拡大は経済活動に深刻な打撃を与えた」と指摘した。感染拡大はグローバルなサプライチェーン(供給網)にも影響すると説明して「経済への影響は03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時より大きくなる可能性がある」と、強い警戒感を示した。

香港経済はもともと米中貿易戦争や香港の民主化を求める市民らの大規模デモの影響で落ち込んでいた。19年の実質域内総生産(GDP)改定値は前年比1.2%減と、10年ぶりのマイナス成長だった。陳氏は「20年も大きな課題に直面している」と指摘し、20年の実質成長率がマイナス1.5%からプラス0.5%になると見通した。

現金支給の対象は香港の永住権を持つ18歳以上の市民約700万人。狙いは「消費を喚起し、経済的な負担を軽減する」(陳氏)ことだ。香港政府は当初、現金支給策に難色を示していたが、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の支持率が1ケタ台に落ち込むなど政府への逆風が強まり、方針転換した。9月の立法会選挙を控え、民主派だけでなく親中派からも現金支給を求める声が高まっていた。

経済対策には中小企業向け低利融資や個人所得税の軽減、低所得世帯向け支援の拡充などを盛り込んだ。政府は19年8月以降、合計300億香港ドル超の企業や個人への支援策を打ち出してきた。デモと新型コロナで観光業や小売業は大きな打撃を受けており、大型対策で経済の底割れを防ぐ。

税収が減り歳出が膨らむため、財政収支が急速に悪化する見通しだ。16年ぶりの財政赤字に転落した19年度に続き、20年度は1391億香港ドルの赤字を見込む。陳氏は現金支給について「通常でない状況を考慮した例外的な措置で、長期的な財政負担にはならない」としつつ「今後5年は赤字が続く」と厳しい見通しを明らかにした。

民主派は予算案について「警察関連の予算が増えている。現金支給は18歳未満が対象外だ」などと批判した。SNS(交流サイト)上では「選挙対策にすぎない」「政府は市民の心を買収しようとしている」など批判的な声が飛び交った。

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