JTB、1億円に減資へ 「中小企業扱い」で税負担軽減
JTBが資本金を現在の23億400万円から1億円に減資することが23日、わかった。税制上、中小企業とみなされることで税負担を軽くするほか、今期発生する巨額損失の補塡原資を確保する狙いがある。増資で財務を健全にする手もあるが引受先を見つけなくてはならない。減資は緊急事態宣言の影響を受けた航空や飲食業界でも相次いでいる。外出自粛による苦境は一段と深まっている。
JTBは、12日の株主総会で決議済みで、3月31日付で実施する。JTBの2020年4~9月期は781億円の連結最終赤字に転落した。株主資本のうち利益剰余金は20年9月末で799億円と、半年でほぼ半減した。10月以降も利用は回復せず、21年3月期は過去最大の1000億円程度の経常赤字を想定する。
資本金が1億円以下の企業は税制上中小企業とみなされ、税負担が軽くなる。大企業と特に異なるのは欠損金と、地方税である法人事業税の扱いだ。
企業が赤字になり欠損金が生じた場合は、来期以降に欠損金を繰り越して税負担を圧縮することができる。資本金1億円以下の中小企業は、大企業よりも圧縮割合を多くすることが認められているため、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな赤字が発生する一方で、一定の回復が見込めればメリットが大きい。
欠損金とならび、中小企業にメリットがあるのが地方税だ。地方税である法人事業税は「外形標準課税」と呼ばれる仕組みを採用している。赤字であっても一定程度の税負担を求める仕組みだが、対象になるのは資本金1億円超の法人だ。
資本金1億円以下に減資して外形標準課税の対象から外れれば、法人事業税の支払いを抑えることができ、手元資金を確保できる。飲食業界ではカッパ・クリエイトやチムニーなどが1億円への減資を表明。航空業界でもスカイマークが資本金を90億円から1億円に減資して配当原資などに充てる方針だ。
JTBも中小企業になることでキャッシュアウトをまずは抑え、来期以降の再浮上に備えて手元資金をできるだけ確保する環境を整える狙いがある。ただ、旅行業界を取り巻く環境は厳しい。
観光庁によると、JTBの旅行取扱高は20年5月に前年同月比96%減の51億円まで落ち込んだ。需要喚起策「Go To トラベル」事業の効果で国内旅行は11月に同28%減まで回復したものの、感染再拡大により12月には同41%のマイナスとなった。業界全体で影響は甚大で、12月は海外旅行が主力のエイチ・アイ・エス(HIS)は同87%減、近畿日本ツーリスト各社を傘下に置くKNT-CTホールディングスは同56%減となった。緊急事態宣言が追い打ちをかけ1月以降はさらに落ち込んでいるもようだ。
緊急事態宣言が3月に解除されても観光がすぐに回復するかは不透明で、海外旅行に至っては「来年以降になる」(旅行大手首脳)という見方が多い。JTBの売上高に占める海外旅行の割合は3割強にも及ぶ。
JTBは国内店舗を統廃合で25%削減するほか、早期退職や採用抑制でグループ全体で6500人の社員を減らす計画を打ち出しているが、観光の低迷が長引けばさらなる構造改革に踏み込まざるを得ない。コロナ禍は1年以上になり、旅行や外食などはいよいよ厳しい状況に追い込まれている。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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