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ヒトの精子の減少加速 70年代から6割減、打つ手見えず

ナショナルジオグラフィック

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今から5年前、男性の精子の数が激減しているという研究結果が出され、人類滅亡の危機かと騒がれた。そして今回、新たに発表された研究によって、精子の数はさらに減り、しかもそのスピードが速まっていることが明らかになった。

5年前の研究は、2017年7月25日付けで学術誌「Human Reproduction Update」に発表された。それによると、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの男性の精子を分析したところ、1回の射精に含まれる精子の数が1973年から2011年までに50%以上減少していたという。その後、同じ研究者が率いるチームが2014年から2019年までに公開された精子サンプルの研究結果を分析し、これを以前のデータに付け加えた。新たなメタ分析は、世界的な傾向を知るため、中南米、アフリカ、アジアを含め1万4233人分のサンプルを使用した。

すると、精子の総数は70年代に比べて62%減少していたことが判明。そればかりか、1年ごとの減少率は2000年以降2倍になっていた。この結果は、11月15日付けで同じく「Human Reproduction Update」に掲載されている。

「数の減少速度は緩やかになるどころか、激しい落ち込み方です。減り方の程度としては全体的にほぼ同じと言えますが、近年に注目すれば加速していることがわかります」と、米ニューヨーク市にあるマウントサイナイ医科大学の生殖・環境疫学者で、論文の共著者でもあるシャナ・スワン氏はコメントする。

「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです。このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなるか、健康面で他の問題が現れてしまうのではないかと懸念しています」と、論文の筆頭著者でイスラエル、ヘブライ大学ハダッサー・ブラウン公衆衛生学部の医学疫学者であるハガイ・レビーン氏は話す。

増える不妊症、原因は男女で同じ割合

不妊症は主に女性の問題だと思われがちだが、米アイオワ大学先端生殖医療センターの生殖生理学者で体外受精・男性病学研究室長のエイミー・E・T・スパークス氏によると、男性が原因の不妊は女性が原因の不妊とほぼ同じ割合で存在するという。「女性の方が男性よりも先に不妊症の相談に行くことが多いため、誤解が生まれたのでしょう」と話す。医学界では、不妊症全体のうち男性不妊が3分の1、女性不妊が3分の1を占め、残りの3分の1は男性側の原因と女性側の原因が組み合わさったものであるというのが共通の認識だ。

しかし最近のデータは、「精子の数が減っている男性の割合が急増していることを示しています。そうなると、パートナーを妊娠させられなくなってしまうかもしれません」と、デンマーク、ロスキレ大学とコペンハーゲン大学病院の分子毒性学者のデビッド・M・クリステンセン氏は指摘する。「これは家族の中だけでなく、社会全体にとっての問題です。イタリアや日本など、多くの国では既に人口が縮小し始めています」。なお、クリステンセン氏は今回の研究には関わっていない。

問題は生殖能力だけにとどまらない。精子の数の低下は、男性の様々な健康問題に関連付けられている。米スタンフォード大学医学部の男性生殖医学・外科学部長で、泌尿器学教授のマイケル・アイゼンバーグ氏も、この研究には参加していないが、「精液の質と全体的な健康には関連性があるとされています。精巣がんや心臓疾患、若年死のリスクと関係しているという研究もあります」と話す。

クリステンセン氏も、「精子の数は男性の全体的な健康の指標として見ることができます」と言う。

実際、2018年2月26日付けで医学誌「Andrology」に掲載された論文では、精子の濃度が低い男性の入院率が高いことが示されている。精子の数が少ないとされる1ミリリットル当たり1500万未満の男性と、1ミリリットル当たり5100万~1億の男性を36年間にわたって比較したところ、前者の方が何らかの理由で入院する割合が53%高くなっていた。これは、体重や喫煙の有無、その他の要因を差し引いても変わらなかった。

男性ホルモンや母体中の環境も影響

一つ注意しておきたいのは、精子の数の少なさはそれだけが単独で起こっているわけではないということだ。精子の数の低下は、男性ホルモンであるテストステロンが低いことや、子宮内にいる男児の生殖器の発達と関連性があると、スワン氏は言う。

スパークス氏によると、男性が精子を作るにはテストステロンの量が一定以上でなければならない。また、テストステロンには精子が作られる細胞の温度を調節する働きもある。「このメタ分析の調査期間中に、テストステロンのレベルも低下していたことが報告されています」

母親が妊娠中に何にさらされていたかも、子どもの精子の濃度に影響する可能性がある。妊娠初期は「生殖プログラミング期間」とされ、この時期に母親が特定の環境化学物質にさらされると、それが胎児である男の子の生殖器の発達に不可逆な変化を与えてしまうことがあると、スワン氏は説明する。「子宮内で生殖器が発達しているときに何らかの損傷を受けると、永久に修復できなくなってしまいます」

逆に、男性に後天的に与えられた損傷、例えば喫煙や農薬の影響は、それを止めれば解決できる。精子が成熟するまでにかかる日数は約75日であるため、男性には2カ月半ごとに健康な精子を作るチャンスが巡ってくると、スワン氏は指摘する。

世界的な精子数減少の原因は?

2017年と2022年のメタ分析はいずれも、何が精子数の低下を引き起こしているかについては検証していない。しかし、環境や、喫煙や肥満など生活習慣による要因を示唆する研究はある。例えば、2022年1月15日付けで学術誌「Toxicology」に発表された論文によると、仕事で農薬に曝されると、精子の濃度が低くなったり、泳ぐ力が弱い精子やDNAに損傷を受けた精子が多くなるという結果が出た。また、2018年11月8日付けの医学誌「Human Reproduction」に発表された論文でも、肥満男性の精子は、濃度が低く、数が少なく、泳ぐ力が弱い傾向が示された。

精子の数の減少が、中南米、アフリカ、アジアの男性にも見られたということは、その原因となる生活習慣や環境因子が世界的に存在することを示唆している。

しかし、減少を加速させているものは何かという問いには、誰もはっきりした答えを持っていない。レビーン氏は、原因は一つではなく、いくつもの化学物質が環境中で混じり合い、それぞれのマイナス効果が拡大されてより大きな問題になってしまったのではないかと考えている。または、長い時間をかけて繰り返しさらされたことが影響しているのかもしれないという。

最新のメタ分析には50年分のデータが含まれていることから、スワン氏は何世代にもわたって環境化学物質の影響が蓄積することで問題が加速するのではないかと考えている。母親が妊娠中にさらされるのと同じ化学物質や生活習慣の要因(不健康な食生活、喫煙、肥満など)に、胎児もさらされる。そして誕生後、これが次の世代へと受け継がれる。また、母親だけでなく父親から受け継がれる可能性もある。母親の子宮内で、父親からの精子のなかにある何かが生殖器の発達を妨げる原因になっているのかもしれない。

これらの環境化学物質や有害な生活習慣にさらされる世代が今後も増え続ければ、その影響は蓄積する一方かもしれない。

文=STACEY COLINO/訳=ルーバー荒井ハンナ(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2022年11月18日公開)

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