台湾海峡の安定へ連携、萩生田氏と台湾・蔡総統が会談
【台北=今尾龍仁】自民党の萩生田光一政調会長は10日、台湾を訪問し、台湾総統府で蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談した。中国が軍事的圧力を強めている台湾海峡の平和と安定に向けて連携を強化することで一致した。
蔡氏は「日本と安全保障の分野で協力関係を深化し、ともにインド太平洋地域の自由で開かれた平和と安定の環境を促したい」と話した。
両氏は安保や経済面でのさらなる協力に関して意見交換した。半導体分野や台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)加入など貿易問題についても話し合った。萩生田氏は台湾のTPP加入を支持すると伝えた。
蔡氏は7月に亡くなった安倍晋三元首相への追悼を述べた。萩生田氏は台湾側の弔意に謝意を示した。
台湾とは政府間の外交関係がなく、議員同士のパイプが重要になる。台湾有事への懸念が高まる状況で政権の要人同士の関係を築く狙いがある。
中国が台湾を侵攻した場合の邦人退避などへの懸念が高まる。有事となれば台湾側との連絡ルートが欠かせない。邦人の避難計画の策定なども急務だ。萩生田氏は蔡氏の面会に続き、安保政策を統括する国家安全会議の顧立雄秘書長とも会った。
萩生田氏は蔡氏らとの面会後、台北市内で記者団に「力による現状変更はあってはならないことを改めて国際社会と共有すると確認した」と語った。
与党の自民党三役が訪台するのは2003年の麻生太郎政調会長(当時)以来19年ぶりとなる。与党幹部の訪問は政治的なメッセージになる。麻生氏が03年に当時の陳水扁総統と面会した際は中国が抗議した。
中国は今年8月、ペロシ米下院議長の訪台に対抗し台湾の周辺海域で大規模な軍事演習を実施した。萩生田氏の訪台に中国が反発することも予想される。