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いま5歳の子は100歳まで生きる 根本から変わる生涯設計

ナショナルジオグラフィック

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英国に暮らす5歳のペギー・ホーキンズちゃんは、大きくなったらペンギンになりたいという。将来、ペギーちゃんがペンギンになる日は訪れないかもしれないが、負けないくらい驚くべきことが今、現実となりつつある。それは、ペギーちゃんが100歳まで生きるということだ。

人口統計学者によれば、今の5歳児が100歳まで生きる可能性はかつてないほど高くなっており、2050年には、米国、欧州、アジアの一部の富裕国の新生児にとっては、それが当たり前になっていると予想されるという。それほどの長寿というのは、ペギーちゃんや同世代の子供たちが、単に長く生きるというだけでなく、彼らの親や祖父母たちとは根本的に異なる人生を歩むことを意味する。

「長生きについて人々が懸念するのは、年を取ることです」と語るのは、英ロンドン大学ビジネススクールの経済学教授で、『The 100-Year Life』(邦訳『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略』東洋経済新報社、2016年)』の共著者アンドリュー・スコット氏だ。

アンドリュー氏はしかし、今後「シルバー津波」が押し寄せて、年老いた親に年金暮らしをさせ、若い労働者が過剰な負担を強いられるという懸念は、まるで見当違いだと考えている。「人々は平均してより長く生きるようになると同時に、より長く健康を保つようになります。これを悪いニュースだととらえる人が多いのは驚きです」

100年間にわたる医学の進歩により、すでに寿命は延びており、一方で教育の向上、繁栄の拡大、女性の選択肢の増加によって出生率は低下している。世界人口は11月に90億人に達したが、増加率は鈍化しつつあり、今世紀半ばにピークを迎えた後、減少に転じると予想されている。また、65歳以上の人口はすでに10人に1人であり、米国では2050年までにその割合が4人に1人になると見られている。人口が少なく、高齢者が比較的多い世界はすぐそこまで来ているのだ。

米国では、過去100年間で平均寿命が30年延びた。しかし多くの場合、その分の年数は人生の最後に付け足される形で、現役を引退した後、弱った体や病を抱えて過ごす期間が延びるだけとなっている。

「これでは老年期が長引いているだけです」と、米スタンフォード長寿センターの創設者で心理学教授のローラ・カーステンセン氏は言う。しかし、今後は事情が変わってくると氏は考えている。長くなった分の年月を生涯全体に分配すれば、「われわれは人生を再設計する素晴らしい機会を手にできるのです」と氏は言う。つまり、老年期が長くなるのではなく、中年期が長くなるのだ。

ゴルフだけでは物足りない

ペギーちゃんの100年の人生は順調なスタートを切ったようだ。ホーキンズ家(ペギーちゃん、小学校教師の母ハティさん、芸術家の父ピートさん、7歳の姉モリーちゃん)は、英サフォーク州マールズフォード村にある小さな家に住んでいる。ペギーちゃんは世界有数の経済大国において、教育や医療が無料で受けられる環境で育っていく。愛情深く、子供たちと一緒に多くの時間を過ごす両親は、外遊びや探検や、そのほかいろいろな楽しいことを教えてくれる。

ペギーちゃんの成長にともない、テクノロジーも進歩していくだろう。10代には3Dプリンターで作った歯列矯正装置が活躍するだろうし、健康チェックと病気予防のためのウェアラブルな診断デバイスやバイオセンサーも登場するだろう。また高齢期には、筋肉への負担を軽減するバイオニック外骨格が活用できるようになる。

ただし、長寿がもたらすそうした機会をペギーちゃんの世代が認識し、病気や貧困という落とし穴を回避するためには、社会によって、生涯の各段階における人々の過ごし方が事実上再構築される必要がある。そうした取り組みはしかし、まだ始まっていないに等しい。

現在、人の一生は概して3段階に分けられる直線的なプロセスとして理解されている。教育の20年間、仕事の45年間、そして引退後の期間だ。このモデルでは、学生は労働者になる可能性において、また労働者は労働することにおいて価値があるとされ、退職者はほぼ価値を生まないと考えられている。

しかし、現在よりも数十年間長く生きることが当然とされる状況であれば、たとえば65歳で引退することは、経済的にも、社会的にも、個人的にももはや理にかなわなくなる。また、たとえゴルフが大好きだという人でも、それだけ長い年月ゴルフばかりではうんざりしてしまうことだろう。

カーステンセン氏は言う。「引退した後は、もう自分の役割は消えていくだけという考え方は、その後の40年という年月にふさわしくありません」

前述の3段階の人生は、今はもう存在しない世界に合わせて誂えられたものであり、「より柔軟な、多段階の人生」に置き換えられることになると、スコット氏は考えている。変化はすでに始まっている。ティーンエージャーという期間は、20世紀なかばの発明だった。それより前の時代は、10代は単に子供であり、その後すぐに労働者になった。今日、より多くの若者たちが実家を離れる時期を遅らせ、子供をもつ時期を遅らせ、成人としての生活に付きものの多くの課題に取り組むことを遅らせている。

60年間楽しく仕事をするには

長寿に合わせて設計された生涯は、より長期の教育(遅く始まり長く続く)から始まる。幼い時期に遊ぶ時間をより長くとり、高校卒業時には、仕事やボランティアに挑戦できるギャップイヤーを設ける。大学教育も同様だ。「子供たちを休ませてあげるのです」とカーステンセン氏は言う。「こうした余分な年月を設けることは、人生のペースが実際に遅くなることにつながります」。教育は生涯を通じて続けられる。一部の大学ではすでに、素早く変化する雇用市場において労働者が最新の技術や知識を身につけられるよう、「60年カリキュラム」を提供している。

仕事の形もまた、新たに作り変えられる。「人生が長くなることに関する大きな懸念は、より長く働くことは避けられないということです」とスコット氏は言う。長い人生を支えられるだけのお金を稼ぐには、労働寿命も長くならなる必要があるが、仕事は今よりも柔軟性を増していくだろう。一生の間に働く時間の長さは同じだとしても、合間にキャリアの中断やパートタイムの仕事、ライフステージに応じた転職などを挟みながら、全体を30〜40年間ではなく、50〜60年間に分配するのだ。

「たとえば、週3日勤務で、長期の有給休暇や育児休暇をとったあとで復職する、あるいは高齢の親や孫の世話をするための休暇をとったあとで復職するといった形をとるわけです」と、英オックスフォード大学の老年学教授でオックスフォード人口高齢化研究所所長のサラ・ハーパー氏は言う。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)をきっかけに、かつてないほど柔軟な勤務体制が見られるようになり、英国の新たな研究によると、週4日勤務が企業や労働者から好評価を得ているという。また、フリーランスを中心としたギグエコノミー(インターネットなどを通じて単発の仕事を発注・受注する経済形態)の成長は、時代遅れの生涯雇用に代わる選択肢を提供している。

引退後の生活も進化する。19世紀のドイツ宰相ビスマルクは、欧州の平均寿命がわずか40歳であった時代に初めて年金を導入した。「当時の国民年金の支給年齢は、現代で言えば103歳にあたります」とハーパー氏は言う。今日では、かつての60代に変わって70代が「晩年の10年」となり、それはわれわれが長く生きるにつれてさらに後年へと押しやられている。「今の5歳児の多くにとって、82歳は今の60歳のようなものになるでしょう」

社会人生活が後半に入るころには、ペギーちゃんはパートタイム労働、メンターとしての若手の指導、ボランティア活動などにかかわるようになるかもしれない。いずれの活動も生産的で、異なる世代の人々と過ごす機会をもたらし、社会的障壁や年齢差別的な意識をなくすうえで役立つだろう。

フレキシブルな働き方はまた、「個人に多くの責任が課される」ことを意味すると、スコット氏は言う。「今の5歳児は、以前の世代に比べると、自分のキャリア管理にはるかに多くの力を注がなければならないでしょう」

彼らはまた、自分の健康も管理しなければならない。アルツハイマー病、がん、心臓血管疾患、関節炎、糖尿病など、年齢とともに脅威が増す疾患の影響を軽減するためだ。新たな治療法が登場する可能性もあるが、健康的な食事、定期的な運動、禁煙、適度な飲酒といった、ライフスタイルにおけるシンプルな心がけが最善の防御となる。

健康であれば機会にも恵まれる。フランスの哲学者シモーヌ・ド・ボーボワールは、1970年に出版した著書『老い』の中で、多くの人は「悲しみと抵抗をもって」老齢に近づき、それを死よりも悪いものとみなすと書いている。彼女はしかし、目的の中に答えを見出した。「老年期をかつての人生の不条理なパロディーにしないための解決策はたったひとつであり、それはわれわれの存在に意味を与える目的を追求し続けることだ」とボーボワールは書いている。

100年間の生涯において大切なのは、若さを長く保つために努力をすることではなく、目的意識を維持できる程度の健康と、職場、家族、地域社会などとのつながりを保つことだ。

「うまく年を重ねる老人になる最善の方法は、うまく年を重ねる中年になることです」。ジョン・ロウ氏は、自分のことを引き合いに出しながらそう笑う。もうすぐ80歳になるロウ氏は、米コロンビア大学の健康政策教授であり、過去には生物医学の研究者、米ハーバード大学教授、大学理事、医療保険会社役員として働いてきた経験をもつ。「わたしは今フルタイムで働いています。周囲に貢献できていると思いますし、もちろん日々を楽しんでいますよ」

人生最初の5年間(ペギーちゃんにとってはこれまでの全生涯)は、将来の健康と幸福の基礎となる期間だ。長寿の人生はわれわれに、生きるペースを落とし、健康を保ち、大切な人たちと一緒に時間を過ごしなさいと伝えている。

「わたしたちにとって最高の時間は、また子供たちがいちばん生き生きするのは、散歩に出かけるときです」とペギーちゃんの母親ハティさんは言う。「散歩をしているとおしゃべりがはずみます。時間と空間を与えられると、子供たちは堰を切ったようにどんどん話をして、自分が面白いと思ったことを全部聞かせてくれるのです」

文=TRISTAN MCCONNELL/訳=北村京子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2023年3月10日公開)

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