香港、ホテル隔離を3日間に短縮 ゼロコロナ政策転換
【香港=木原雄士】香港政府は8日、海外と台湾からの到着時に義務付けているホテルでの隔離期間を7日間から3日間に短縮すると発表した。12日から適用する。新型コロナウイルスを完全に抑え込むゼロコロナ政策が企業活動に大きな影響を与えているため、事実上、方針を転換する。
3日間のホテル隔離後、自宅で過ごせる4日間の医学観察期間を設ける。4日目から外出できるものの、同期間中はレストランやバー、ジムなどへの立ち入りは禁止される。
中国本土の「健康碼(健康コード)」と似た仕組みを導入し、スマートフォンのアプリで感染者は「赤色」、感染していない入境者は「黄色」と表示され、行動制限を課される。李家超(ジョン・リー)行政長官は記者会見で「リスクは管理可能であり、香港の競争力と通常の生活を維持したい」と述べた。
香港は中国式のゼロコロナ政策を志向し、入境者の強制隔離や一定数の感染者が出たマンション住民の全員検査などを続けている。ただ、足元の新規感染者は1日あたり4000人程度とゼロコロナは達成できていない。
経済界からは中国本土とも海外とも自由に行き来できない状況に不満が噴出していた。日本貿易振興機構(ジェトロ)などが7月に実施した香港の日系企業向けアンケート調査では84%がゼロコロナ政策によって「マイナスの影響が生じている」と答えた。
香港は「一国二制度」のもと、本来は中国本土と異なる規制が適用される。主要国がコロナとの共生に動く中で、ゼロコロナ政策は人材流出や経済都市としての地盤沈下を加速させるとの指摘が出ていた。
隔離期間の短縮で香港人の海外旅行需要が高まる可能性もある。コロナ前の2019年の香港からの訪日客数は229万人と、国・地域別では4位だった。7日間の隔離期間込み旅行商品も売り出されていた。
香港のキャセイパシフィック航空は8日、政府の決定を歓迎しつつ、コロナ規制全廃に向けたロードマップを示すよう政府に求める声明を出した。