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阪神ファンも大爆笑 人が動きたくなるオモロイ仕掛学

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日経ビジネス電子版

新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、各地で久々ににぎわいを見せた今年のゴールデンウイーク。プロ野球阪神タイガースの本拠地、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)も例外ではなかった。球場に集まった観客らの注目をひときわ集めていたのがタイガース版「真実の口」。その名の通り、イタリア・ローマにある石の彫刻になぞらえたもので、タイガースのマスコットキャラクター「トラッキー」「ラッキー」「キー太」の口に手を入れると「何か」が起きる。

嘘をついていたら手が抜けなくなる……わけはない。傍らにはこう書かれている。「本当の阪神ファンならアルコールがでます」

そう、これは来場者に手指消毒を促す仕掛け。観戦に来た阪神ファンの夫婦は「遊び心満載。めっちゃおもろい」と夢中でトラッキーの口に手を突っ込んでいた。「あれ、出えへんで!」「ホンマもんのファンちゃうってことやん」。あちこちから、手指消毒を楽しむファンの声が聞こえてきた。

タイガースがこの仕掛けを設置したのは2021年4月のこと。無理強いするのではなく、ファンに楽しんでもらいながら自発的な感染対策を促したい――。そんな思いを持った担当者が注目した、ある取り組みがあった。18年に大阪大学医学部付属病院で実施された「手指衛生『真実の口』キャンペーン」だ。

新型コロナウイルスが確認される前だった当時、手指の消毒をしていたのは来院者のわずか0.6%。しかし、真実の口を模した仕掛けを取り入れたところ、そのおよそ20倍の約10%の人が「真実の口」に手を入れて消毒をするようになったのだ。仕掛けたのは大阪大学大学院経済学研究科の松村真宏教授。タイガースの担当者は松村教授に連絡を取り、教授が快諾して甲子園球場での取り組みが実現したという。

松村教授は、こうしたアイデアで人々の行動変容を促す取り組みを「仕掛学」と名付け、06年から研究を続けている。最近ではJR西日本伊藤園コスモスイニシア日本たばこ産業(JT)など企業と組んだプロジェクトも増えている。

例えば19年にJR西日本から持ち込まれたのは、大阪駅のエスカレーターに利用客が集中するので、隣にある階段の利用を促したいという案件だ。「混雑緩和のために階段をご利用ください」と正論で呼びかけても、楽をしたい利用客にとっては何のメリットもない。古典的な手法としては「健康(ダイエット)のために階段を使いましょう」と呼びかける手もあるが、これも健康を気にする人以外には響かない。

そこで、松村教授は全く別の方向からアプローチした。某アイドルグループの定番イベントから発想した、その名も「大阪環状線総選挙」。「アフター5に行くならどっち?」と題して、沿線で近隣の代表的な飲み屋街である「福島」と「天満」で投票を行った。

階段を2色に分け、左半分を上れば福島派、右半分なら天満派という意思表示になる。投票に参加したければ階段を利用するよう促したのだ。ご丁寧なことに、階段上部の天井にはセンサーとモニターを設置し、リアルタイムで票数を表示する仕掛けまで施した。

その結果、面白いことにはついついのってしまう関西人の気質も手伝ったのか、エスカレーターを利用する人は減少。階段を利用した人は7%増、1日当たり1342人増えたと推計されるという(曜日やイベントの有無による変動を補正した後の数値)。

言うまでもなく、利用者はJR西が狙うエスカレーターの混雑緩和のために階段を利用したわけではない。福島と天満のどちらかに投票しようと思って行動を変えたのだ。それが結果的にエスカレーターの混雑を緩和した。「利用者が起こしたい行動と解決する問題が、一見すると無関係に見えるときほどうまい『仕掛け』と言える」(松村教授)

意識的に選ばせる「ズラし」戦略

消費者が意識することなく、結果的に行動変容を起こす。この点は行動経済学のナッジ理論とよく似ている。

ただ、松村教授の立場はナッジとは一線を画す。「ナッジは人間が持つ潜在的な認知バイアス(傾向)を利用し、本人が気づくことなく『選ばされている』部分が大きい」と松村教授は解説する。

代表的なものとしては初期状態を変える「デフォルトナッジ」が挙げられる。例えば「臓器提供をしてもよい」場合に意思表示をするのではなく、「臓器提供を拒否する」場合に意思表示をするようにルールを変更すると、臓器提供の同意率が高まるとされている。ただ、松村教授は「この話には続きがある。意思表示をしなければ臓器提供してもいいことになると説明を受けると、拒否の意思表示をする人が増えるという結果が出ている」と話す。

これに対して仕掛学は、「行動の選択肢を面白くして積極的に選んでもらう手法だ」(松村教授)。手を入れると消毒液が出る「真実の口」も、投票するために階段を上らないといけない「大阪環状線総選挙」も、面白いからやってみようと利用者が行動を起こして初めて、仕掛けた側の目的が達成される。「実はこういう狙いだった、とネタをばらしても人々が(自分の行動を)後悔せず、むしろ面白がってもらえたら大成功だ」と松村教授は笑う。

仕掛学は、新商品や新サービスを知ってもらうためのマーケティングにも活用できる。例えば試食の際、「2つの商品のどちらが好みか投票してください」というイベントを実施すれば、人々は自然と2つとも試食してみようと行動を起こすだろう。

今、松村教授が取り組んでいるのがJTと組んだ喫煙所マナー向上プロジェクトだ。

非喫煙者の多くにとって喫煙所は迷惑で見たくもない施設だ。「街の隅へと追いやられ、周囲の目がなくなった結果、マナーが悪化している」(松村教授)。そこでミラーを用い、街の景観に溶け込みつつも、面白い空間に見えるようにして、あえて周囲から注目が集まる喫煙所にする計画だ。外から中の喫煙者の姿が見えるわけではないが、中にいる喫煙者は外からの視線を感じる仕掛け。これにより、今まで以上にマナーを守ろうとする意識が高まるはずだとみる。

企業からの依頼が相次ぐ理由について、松村教授は「企業は、正論で考えつくことは全て試している。それでもダメだから声がかかる」と話す。企業は課題解決に正面から取り組むだけでなく、面白がってもらえる方向に「ズラす」戦略も積極的に考えてみる必要がありそうだ。

(日経ビジネス 佐藤嘉彦、生田弦己)

[日経ビジネス電子版 2022年5月19日の記事を再構成]

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