いまも繰り返す「核保有は合憲も」の岸答弁
60年安保への序曲(52)
特別編集委員・伊奈久喜
好事魔多し。お国入りを楽しんだ岸信介首相が国会に戻ると、ちょっとした爆弾が破裂した。日本が憲法上核兵器を持てるかどうかの論争である。岸は「合憲の場合もある」と答弁した。いまに尾を引く論争である。
原水爆は違憲だが……
1957年5月7日の参院内閣委員会でのやりとりである。
質問者は社会党の秋山長造。後に副議長になる高潔な人物だった。
議事録は次のように記す。
○国務大臣(岸信介君) 核兵器という言葉で用いられている各秘の兵器を、私はことごとく技術的に承知いたしませんけれども、名前が核兵器であればそれが憲法違反だ、秋山委員のお考えはそういうふうなようでありますが、そういう性質のものじゃないのじゃないか。一方から言えば、われわれは、やはり憲法の精神は自衛ということであり、その自衛権の内容を持つ一つの力を備えていくというのが、今のわれわれの憲法解釈上それが当然できることである。しこうしてそれぞれ科学の発達等からやはり兵器の発達というようなものにつきましては、科学的の研究をしていかなければならぬという建前におきまして、いつまでも竹やりで自衛するという性格のものではなかろう。しかし今日いわゆる核兵器という言葉で言われておるその中心をなす原水爆のごときもの、これは当然われわれは自衛権の内容としてそういうものを持つということは、憲法上許されないということについては、私も異論ないのでございますけれども、今言っておる科学的の技術的の研究なり、発達というものと見合せて、あくまでも憲法の精神であるところの、われわれは他から侵略される場合において、その侵略を阻止するという性格のもの以上を持つということは、これは憲法が禁止しておることであり、憲法に反することである。そこのにらみ合せの問題でありまして、ただ核兵器と名がつくから一切いけないのだと、こういうことは私は行き過ぎじゃないかと、こう思っております。...