洋上風力発電 浮体式で挑む
長崎県・五島列島の沖合で日本初の「浮体式」洋上風力発電ファームの建設が動き出した。海に浮かぶ大型クレーンが風車の発電機などをつり上げ、タワー上部に取り付ける。海中に沈んだ部分を含めると全長176.5メートルの巨大建造物になる。11月下旬、完成した1号基が設置海域にえい航された。年内に3基、2023年に残りの5基を設置し24年1月に発電事業を始める予定だ。
洋上風力は再生可能エネルギーを担う手段として有望視されている。世界では欧州を中心に風力の割合が高い。日本は太陽光の普及が進んだことなどから、風力発電は総発電量のわずか0.9%にとどまっている。風力発電所を建設するための港湾の整備が遅れているほか、発電所の施工などを担う国内人材の不足も課題だ。
陸上で大きな部品を作り、海上で完成させる。五島市福江島の建造ヤードでは巨大な風車の部品が組み立てられている。浮体部分は円筒形部品で構成され、加工する機械は事業主体の戸田建設などが自社開発した。風車の部品は約2万点にも及び、雇用創出や関連産業への経済波及効果も大きい。台船で約16キロメートル離れた椛島の作業海域に運ばれた浮体部分は、自身の浮力を利用して海上で立て起こされる。タグボートやクレーン船が忙しく行き交う様子は、海の上の工場のようだ。
グラフィックで知る日本の洋上風力発電
日本では、事業者が洋上風力発電所の稼働に向けて海域を占用するための「再エネ海域利用法」と呼ばれる法律が2019年4月に施行。21年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」の中で、洋上風力が再生可能エネルギー主力電源化の切り札と位置づけられた。洋上風力導入に向けて開かれた官民協議会では、2040年までに最大で原発45基分の出力に相当する4500万キロワットを導入する目標が掲げられるなど、大量導入の機運が高まる。年内には秋田県で着床式の大規模な洋上風力発電ファームでの商業運転が始まる。日本の洋上風力発電が黎明(れいめい)の時を迎えている。
(小園 雅之、柘植 衛、宮崎 瑞穂)