中国テニス選手の安否不明問題 国際社会に懸念広がる
米大統領報道官「中国当局、証拠提供を」
【ワシントン=坂口幸裕】中国の著名テニス選手の彭帥さんが中国共産党元幹部から性的被害を受けていたと告白した後に安否が不明となっている問題をめぐり、国際社会で懸念の声が広がってきた。サキ米大統領報道官は19日の記者会見で「彼女の居場所と安全について中国当局に検証可能な証拠を提供するよう求める」と表明した。
テニスで四大大会女子ダブルス2勝を挙げた実績のある彭帥さんは2日、短文投稿サイト、微博(ウェイボ)に共産党最高指導部メンバーだった張高麗元副首相と不倫関係にあったと告白する文章を投稿した。すぐに消去されたものの拡散し、彭帥さんと連絡がとれなくなった。
サキ氏は「深く懸念している」と強調。「我々は言論の自由を擁護し続ける。 中国は批判への寛容さがなく、声を上げた人を黙らせてきた。こうした慣行を非難し続ける」と訴えた。
米CNNによると、国連人権高等弁務官事務所のリズ・スロッセル報道官はジュネーブで記者団に「彼女の居場所と健康状態を証明することが重要であり、彼女の性的暴行の疑惑について完全な透明性を持って調査されることを強く求める」と話した。
女子ツアーを統括するWTAに「安全な環境にいる」という情報は届いたが、確認したWTA関係者はいないという。WTAチェアマンのスティーブ・サイモン氏は中国に調査を要求する一方、適切な結果が出なければ中国からの撤退も示唆している。
ロイター通信によると、国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員はこの問題への対処次第でIOCが22年北京冬季五輪開催に関して強硬な態度をとる可能性があるとの見解を示した。
パウンド氏はロイターに「もし早急に良識ある形で解決されなければ、事態の収拾がつかなくなるかもしれない。(IOCが強硬な態度をとる)可能性もある。五輪大会を中止するとまではいかないかもしれないが、どうなるかは誰にも分からない」と語った。
中国外務省の趙立堅副報道局長は18日の記者会見で「これは外交問題ではない。私も状況を把握していない」と述べるにとどめた。