半導体メモリー、ゲームで恩恵 サムスンやSK
【ソウル=細川幸太郎】半導体メモリー大手の業績が急速に回復している。韓国サムスン電子の半導体事業の売上高営業利益率は30%に迫り、同SKハイニックスは20%を超えた。新型コロナウイルス問題を受けたデータセンター投資の拡大に加え、ゲーム機の新製品やオンラインゲームの普及が需要をけん引する。
サムスンで半導体部門を担当する韓真晩(ハン・ジンマン)専務は30日、決算発表の電話会見で「サーバーとパソコンに支えられメモリー需要が堅調だった。今後はゲームやスマートフォンがけん引する」と話した。
4~6月期の部門営業利益は5兆4300億ウォン(約4800億円)と前年同期比60%増えた。需給の改善を背景にメモリー市況が堅調で「DRAM」と「NAND型フラッシュメモリー」という代表的な2種類で世界首位のサムスンは恩恵を大きく受けた。営業利益率は1~3月期より7ポイント高い29.8%になった。
スマホや家電、ディスプレーなど他の事業は振るわず、連結営業利益の増加率は23%にとどまった。半導体だけが好調で、全体の7割近くを稼いだ。
半導体メモリーで世界2位のSKハイニックスも業績が急拡大した。4~6月期の営業利益は前年同期比3.1倍の1兆9467億ウォンだった。営業利益率は22.6%と1~3月期より12ポイント高い。売上高の8割を占めるDRAMが好調で、平均単価は前四半期に比べ15%上昇したという。
車辰錫(チャ・ジンソク)最高財務責任者(CFO)は「中長期的にも堅調な成長が続く」とみている。19年に比べた20年の出荷量増加率はDRAMの場合で10%台後半、NANDは40%以上を見込む。
強気の見通しを示すのは、年末に次世代ゲーム機の発売が控えているためだ。ソニーの「プレイステーション5(PS5)」、米マイクロソフトの「Xbox(エックスボックス)シリーズX」。ともに7年ぶりとなる新商品をクリスマス商戦に投入する。
これらはいずれも、半導体メモリーを使った「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」をデータの保存媒体に初めて採用する。ハードディスクを使う従来品に比べて高速でデータを読み込める。PS5は標準で825ギガ(ギガは10億)バイト、Xboxは1000ギガバイトと大容量で、高性能スマホの4倍に相当するメモリーを搭載する。
PSはもともとDRAMも搭載しているが、機能の高度化に伴い新商品では容量が従来の2倍に増える。NH投資証券の都炫佑(ド・ヒョンウ)アナリストは「年間のPS5販売量は2000万台規模。メモリー市場に与える影響は大きい」と指摘する。SKの車CFOは「新型ゲーム機向けは下半期のNAND需要の5%程度を占める」とみている。
オンラインゲームも半導体メモリーの需要を押し上げる。世界的な外出自粛もあって品薄状態が続く任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」はネット経由で対戦などができる。高画質のゲームはデータセンターの負荷が高まり、サーバー需要につながる。パソコンでゲームを楽しむ場合も、スムーズに操作するには大容量のメモリーが必要になるケースが多い。
下半期にはスマホも回復に向かうとの見方が出ている。都市封鎖(ロックダウン)が続いた4~6月期の潜在需要が積み上がり「下半期のスマホ販売は上半期に比べ27%増える」(大信証券)。実現すればメモリー需要も増えることになる。
供給面では、サムスンとSK、米マイクロンテクノロジーの韓米3社で約8割のシェアを持ち、値崩れにつながるような過剰投資は起こりにくい。サーバーからゲーム、スマホへと需要サイドは次々とけん引役が登場する一方、供給側は寡占が進んでいるのが現状だ。
こういった構図を変える可能性があるのが、中国の国策半導体メーカーだ。米国の規制によって製造装置を思うように導入できず、技術蓄積も途上のため存在感はまだ小さい。ただ、資金面を含めて中国政府の全面的な支援を受けているだけに、いずれ台頭してくるとの見方は根強い。中国勢が量産を始める時期がメモリー産業の大きな転換点となる。