スポーツを揺るがす遺伝子ドーピング サイエンス動画
Science View
医学と遺伝子工学の急速な進歩によって、人類は人体をつくりかえる術(すべ)を手に入れつつある。生命の設計図である遺伝子に細工を加えれば、生まれながらにしてもつ体ですら再び生まれ変わる。2020年には遺伝子を自在に改変する「ゲノム編集」技術がノーベル化学賞の受賞対象になった。遺伝子操作は社会の様々な場面に影響をもたらす。その一つがスポーツだ。国家による極端な勝利至上主義や最高のパフォーマンスを望むアスリートらの焦りは、遺伝子を悪用して運動能力を高める「遺伝子ドーピング」への誘惑を生む。本来の遺伝子を操作した体は「本人」なのか「他人」なのか。単にスポーツの問題というだけでなく、「ヒトとは何か」という根源的な問いを投げかける。東京五輪でドーピング違反の摘発に力を入れた国際検査機関(ITA)は遺伝子ドーピングにも目を光らせる。22年の北京冬季五輪では「遺伝子の不正」を暴くドーピング検査が本格導入される見通しだ。
この連載では、身近なサイエンスの話題を動画でわかりやすく伝えていきます。科学における「そもそもどういうこと?」を哲学的視点も交えながら、最新の研究成果を踏まえて紹介していきます。
(サイエンスエディター 加藤宏志、淡嶋健人、グラフィックス 藤沢愛、映像 大須賀亮)