米国防長官、軍のデモ鎮圧に反対 トランプ氏とズレ
【ワシントン=中村亮】米白人警官による黒人暴行死事件の抗議デモを巡り、エスパー国防長官は3日の記者会見で、連邦軍を動員した武力鎮圧に反対する考えを表明した。全米で外出禁止令違反などでの逮捕者が累計1万人に迫るなか、トランプ米大統領は治安維持のために軍を動員する意向を示したが、政権内で足並みの乱れが明らかになった。
黒人暴行死事件が起きたミネソタ州ミネアポリス市で5月26日に始まった抗議デモは全米50州に広がった。AP通信によると、外出禁止令違反などの逮捕者は6月3日までに計9300人。ロサンゼルス市周辺の約2700人が最も多く、ニューヨーク市は約1500人とみられる。
一部デモ隊の略奪や暴行などに対し、トランプ氏は連邦軍を動員し武力鎮圧も辞さない構え。国防総省によると、連邦軍に属する米兵1600人がすでに首都ワシントンの近郊に移動した。ただエスパー氏は記者会見で「部隊を治安維持の役割で使うのは最終手段であり、最も緊急かつ差し迫った状況に限られるべきだ」として「いまはそういう状況にはない」と慎重な姿勢を示した。
これに関し、マクナニー大統領報道官は3日の記者会見で「大統領が軍動員に関する唯一の権限を持つ」と強調した。エスパー氏の発言については「エスパー氏は現時点で長官だが、大統領の信頼を失えばどうなるかは今後分かるだろう」とけん制した。
トランプ氏が1日、デモ隊を催涙弾で強制排除してホワイトハウス前の教会を訪れ、聖書を片手に写真撮影をした際にはエスパー氏も付き添った。写真撮影はキリスト教保守派の支持層に向けたトランプ氏の選挙活動の一環で、政治から中立であるべき国防長官として不適切な行動だとの声が広がった。エスパー氏は3日の記者会見で「写真撮影があることは知らなかった」と釈明した。
米メディアによると、米ミネソタ州の地元検察当局は3日、黒人男性ジョージ・フロイドさんの首を膝で押さえ死亡させた第3級殺人容疑で逮捕・訴追していたデレク・ショービン容疑者をより重い第2級殺人容疑で訴追した。現場にいた別の警官3人(いずれも免職)についても、第2級殺人のほう助・教唆容疑で訴追した。
米CNNによると、第3級殺人容疑の場合は犯人に殺人の意図はないとみて拘留期間は最高25年に限られる。これに対し第2級は殺意を認めるもので、より重い刑が課される可能性がある。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。