世界の半導体製造装置販売、今年過去最高の647億ドルに
【台北=中村裕】アジアを中心に半導体業界の勢いが増している。半導体の国際展示会「セミコン台湾」が23日、台北市で開幕し、2020年の半導体製造装置の世界販売額が上方修正され、過去最高の647億ドル(約6兆8000億円)に達する見通しとなった。データセンターや中国からの特需が大きく膨らむという。
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が20年の見通しを示した。半導体製造装置の販売額は6月時点の予測の635億ドルからさらに伸び、647億ドルに達するとした。新型コロナウイルスをきっかけにテレワークやオンライン授業が普及したことでサーバー需要が膨らみ、半導体需要も高まった。
米国による華為技術(ファーウェイ)への制裁強化の影響もプラスに働く。中国の半導体メーカーが自社にも制裁が及ぶことを恐れ、駆け込みで各種の製造装置を買い急いでいる。実際、中国向けの1~7月の販売額は前年同期比45%増と大きく伸びた。年間でも過去最高の173億ドルに達し、世界の3割弱を占めるものとみられる。
同協会は、来年以降も業界全体で好調が続くとみる。21年の販売額見通しは、20年予測比で8.2%増となる初の700億ドルに設定した。実現すれば2年連続で前年実績を上回り、過去最高額となる。仕向け地別では、首位が中国向けで166億ドル、2位は台湾で159億ドル、3位は韓国で154億ドルと予測した。
同協会で調査担当を務めるクラーク・ツェン氏は今後について「ファーウェイへの制裁強化で、業界が受ける影響は数四半期をかけて正常化する」と指摘した。その上で「もし中国の半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC)などにも米制裁が科され、中国政府が米に報復するようなら、業界は今後2~3年は破壊的で衝撃的な影響を受ける」と語った。
台湾積体電路製造(TSMC)の経営トップの劉徳音董事長も同日のフォーラムで「今後は(安全保障の観点から)データの行き来が今までのように自由ではなくなる。(中国など)多くの国が(データを保護するため)半導体を自前でつくりたいと思うようになる。業界競争は激烈になるだろう」と語った。