下請法違反、過去最多8000件 働き方改革でしわ寄せ
公正取引委員会が2019年度に指導・勧告した下請法違反は8023件で、12年連続で過去最多を更新したことが27日、分かった。発注企業が自社の働き方改革に伴って生じた費用を下請けに肩代わりさせるケースが目立ち、公取委は警戒を強めている。
公取委が指導・勧告した発注企業の業種は製造業が3496件(43.6%)で最も多く、卸・小売業1679件(20.9%)、情報通信業889件(11.1%)が続いた。下請け企業に不利益が及ぶ違反行為(6919件)の内訳は、支払い遅延が52.8%を占め、他には代金の減額(16.6%)、買いたたき(10.4%)が多かった。
19年度の指導・監督の結果、発注側268社が計約27億円を下請けの7469社に返還した。
公取委の調査によると、長野県の製造販売会社は働き方改革に伴って自社で担っていた物流センターでの仕分け作業を外部に委託した。その費用を捻出するため、下請け企業への支払代金の一部を差し引いていた。
埼玉県の小売業者は、自社の店舗での商品の陳列作業を手伝わせるため、下請け企業に要請して従業員を無償で派遣させていた。作業は休日で長時間に及んだという。
中小事業者ら約150人からの聴取では「取引先の大手企業の担当者がフレックス勤務で、夜間や土日の打ち合わせを求められた」「取引先の勤務時間内に作業を終わらせるよう求められ、1日で終わるはずの仕事が2日に分かれてコストが増えた」といった訴えがあったという。
残業時間の上限規制を設けた働き方改革関連法が19年4月に施行され、大企業は同月から、中小企業は20年4月から適用された。大企業で先行した業務見直しのしわ寄せが下請けに及ぶことを公取委は警戒しており、担当者は「発注企業が強い立場を利用して不当な取引を強いているケースがないか、今後も実態把握を進めたい」と話している。