インドで携帯増産、鴻海・サムスンなどが計画
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業や韓国のサムスン電子がインドで携帯電話を増産する。インド政府が6日、新たな補助金を活用して両社を含む16社が同国内に投資する計画だと発表した。インド政府によると今後5年間に16社合計で10兆5千億ルピー(約15兆円)相当の携帯電話や電子部品をインド国内で製造する見通し。
生産額の6割強にあたる6兆5千億ルピーを輸出に回す計画で、実現すれば携帯などの生産拠点としてインドの存在感が高まる。同国政府は16社が5年で20万人以上の新規雇用を生み出すことを期待する。
インド政府は国内製造業の振興のため、4月に携帯や特定の電子部品を対象とした助成制度「生産連動型優遇策」を新設した。携帯などを大量生産するメーカーへ、2019年度の売上高に比べた増加額に対して4~6%を補助金として5年間払う。補助金を得るには毎年度、一定の追加投資や売り上げ増の基準を満たす必要がある。
インドの電子情報技術省によると、この優遇策を活用する16社にはサムスンなどのほか、米アップルのiPhoneを製造する台湾の電子機器の受託製造サービス(EMS)大手、緯創資通(ウィストロン)や和碩聯合科技(ペガトロン)も名を連ねた。ラバ・インターナショナルなどインドの携帯メーカー5社と電子部品メーカー6社も助成を申請し、承認された。
インド国内の携帯電話の生産台数は2019年度に3億3000万台(300億ドル=約3兆1500億円相当)となり、14年度の5.5倍に増えた。優遇策を受けて今後、生産台数は大きく増えそうだ。
インドのモディ政権は新型コロナウイルスの感染拡大で製造業のサプライチェーン(供給網)が寸断されたのを教訓に、国内製造業の振興に改めて力を入れる方針を打ち出した。米国と中国の対立が深まる中、生産拠点を中国から移転・分散しようとする企業の受け皿になる思惑もある。