韓国、危機下の総選挙公示 新型コロナ対応争点
【ソウル=恩地洋介】韓国で26日、4月15日投開票の国会議員総選挙の候補者登録(公示)が始まった。革新系与党が過半数の議席を得られるかが焦点で、結果は2年余りの任期を残す文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政権運営を左右する。有権者の関心は新型コロナウイルスを巡る政権の対応に集まる。世論調査では与党が優位だが、野党は水際対策の失敗などを問題視する。大規模集会の禁止など「危機下の選挙戦」では文政権の危機管理も問われている。
総選挙は2016年以来4年ぶりで、与野党が253の小選挙区と47の比例代表区で計300議席を争う。26日は候補者が各地の選挙管理委員会に立候補を届け出た。与党が善戦すれば、文政権は任期後半の政策立案を安定した議会に委ねられる。野党が過半数を得れば、22年の任期満了へ死に体(レームダック)化が早まる可能性がある。
与党の「共に民主党」と保守系最大野党の「未来統合党」はどちらも過半数議席の獲得を目標に掲げる。共に民主党の現有議席は121と半数に満たない。これまでは他の中道政党の協力を得て法案を可決していた。
与党は大統領府で文大統領と働いた側近らを要所で擁立した。選挙戦では文氏肝煎りの検察改革など、3年近い政権運営の成果を訴える。陣営は争点を「有権者の関心事は新型コロナに絡む生活支援や雇用問題だ」(ソウル市の候補)とみており、公約には保健当局の組織拡充やワクチン開発を担う研究機関の設立などを盛り込んだ。
各種世論調査によると、共に民主党の支持率は未来統合党を10ポイント以上、上回っている。
文政権は経済の行方を懸念する世論をにらみ、矢継ぎ早に対策を打ち出してきた。
21日には「国民と痛みを共有するため」として大統領と閣僚、次官級以上の公務員の給与30%を4カ月間、国庫に返納すると決めた。その3日後には2月末に表明した総額16兆ウォン(約1兆4千億円)の経済対策に続き、第2弾となる100兆ウォンの金融支援を発表した。
一方、未来統合党は2年後の大統領選をにらみ、議会の主導権を確保したい考えだ。2月には分裂状態にあった保守の3党が合流し、朴槿恵(パク・クネ)前大統領も拘置所から結束を呼びかける声明を出した。だが、世論調査を見る限りは政党支持率に大きな変化は生じていない。
同党は新型コロナを巡り中国人の入国全面禁止を掲げる。文政権の水際対策や外交の失敗を追及する構えだ。日韓関係に絡み、文政権が破棄しようとした日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持も訴える。
新型コロナの感染拡大で一部の政党は選挙の延期を主張していた。公職選挙法には天変地異の際に大統領が延期を決定できる規定があるが、現職議員の任期は5月29日に迫り、先延ばしは難しいと判断したようだ。
市民の外出自粛や大規模集会の禁止といった制約があるなか、選挙戦の行方は読み切れない要素が多い。候補者は街頭での演説や握手などの選挙活動が思うようにできず、知名度の低い新人には不利との見方がある。
感染を懸念した有権者が投票所に足を向けず、投票率が低下する可能性も指摘される。無党派や高齢者の投票率が下がると保守に不利となり、組織戦を展開できる労働組合などに支えられる与党が有利になるとの分析がある。もっとも、選挙の実施によって感染の勢いが再び強まるような事態になれば、選挙結果にかかわらず政権への批判が高まる可能性もある。
一方、中央選挙管理委員会は26日、イタリアや米国など17カ国にある在外公館の選挙事務を4月6日まで停止すると発
【ソウル=恩地洋介】26日に候補者登録(公示)が始まった韓国総選挙は、比例代表区に候補者を擁立する政党が乱立する見通しだ。中小政党の死票を減らす狙いから、少数政党に有利とされる「小選挙区連動型」の比例代表制度を導入したためで、政党数は前回の2016年総選挙から倍増し40を超すとみられている。
定数300のうち比例代表は47議席。このうち30議席については新しいルールとなり、得票率で3%をとった政党は議席を確保できる一方、小選挙区で議席を得た政党は取り分を減らされることになった。少数政党でも議席を得やすくなったとして、政界進出をめざす宗教団体や女性人権団体などが相次いで政党を結成した。
26日時点で中央選挙管理委員会に登録を届け出た政党は43に上った。韓国メディアによると、地方自治体の選管が予行演習で用意した投票用紙の長さは60センチメートルを超え、機械を使った集計作業が難しくなったという。
もっとも、中小政党の救済をうたった当初の理念は骨抜きとなった。議席を減らしたくない大政党が、小選挙区と切り分けた比例政党を作ったからだ。革新系与党の「共に民主党」は「共に市民党」、保守系最大野党の未来統合党は「未来韓国党」という名の政党をつくった。比例でも二大政党が対決する構図となる。
新制度は2019年末、与党と一部の野党が改正選挙法の採決を強行して成立した。保守系の政党やメディアは「総選挙後の国会で元に戻すべきだ」と主張している。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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