奈良市、宿泊税導入へ 20年度中目指す
ホテルなどの宿泊客から料金に上乗せするなどして徴収する宿泊税について、奈良市は2020年度中の導入を目指す方針を固めた。24日、有識者らによる検討懇話会を開き、徴税の合理性が確認できたと判断した。今後、指摘事項などを踏まえた上で条例案と20年度予算案をまとめる。
市は今年7月から懇話会を開き、徴税の是非や目的、使途などについて学識経験者や商工会議所、観光協会関係者らから意見を聞いた。今回が最終回で、市は1泊あたりの税額を200円とした場合の年間税収想定が3億2千万円程度、徴税コストが6千万~7千万円程度になるとの試算を明らかにした。修学旅行生からは徴収しない想定だ。
使途は、デジタルサイネージの導入など観光客の受け入れ環境の整備や、まちなみ保全といった観光資源の魅力向上などに充てる案を説明した。
奈良は大阪や京都からの日帰り観光が定着し、宿泊者数が少ないことが長年の課題。県全体でみると宿泊室数や宿泊者数は全国最下位クラスで、市のまとめでは18年は観光客数1700万人に対し、宿泊者は約1割の173万人にとどまった。
懇話会では「宿泊率を上げる施策が必要」「財源は限られるので、宿泊者がメリットを感じられるよう使途の選択と集中が重要」などの意見が上がった。京都や大阪でホテルが供給過剰傾向となっていることに触れ、「奈良への影響も懸念される。泊まりたくなる施設を増やす必要がある」との指摘も出た。
仲川げん市長は「宿泊税を徴収することの合理性は確認できた。使途など指摘があった『宿題』をクリアして進めたい」と話した。今後、関係団体からヒアリングなどをした上で3月議会をメドに条例案と関連予算案を提出する。法定外目的税にあたるため総務省の同意が必要で、税システム改修や周知期間を経て20年度中の導入を目指す。
周辺では17年に大阪府、18年に京都市があいついで宿泊税を導入している。奈良市によると、大阪府は年間約10億円、京都市は同45億円の税収規模。今年4月に導入した金沢市でも7億円程度が見込まれており、奈良市の想定額は先行事例と比べても低い。
(岡田直子)