米国、70年ぶり石油純輸出国に 9月統計
【ニューヨーク=大島有美子】米エネルギー情報局(EIA)が29日に発表した統計によると、9月の原油・石油関連製品で輸出量が輸入量を1日当たり8万9千バレル上回った。ブルームバーグ通信によると輸出が輸入を上回るのは70年ぶり。米国が石油の「純輸出国」となることで中東やロシアなどへのエネルギー依存度が減り、地政学的なバランスが大きく変わる可能性がある。
月次で輸出が輸入を上回るのはEIAの統計でさかのぼれる1973年以来初めてで、ブルームバーグによると1949年以来になるという。
米国は今まで輸入超過国で、2005年後半には1日当たり1330万バレル輸入が輸出を上回っていた。米国内で新型原油シェールオイルの生産が増えるにつれ輸出入の差が縮まっていた。
米国からの石油輸出量は右肩上がりで伸びており、9月の月間輸出量は前年同月比で18%増えた。一方で9月の輸入量は12%減った。地域別にみると、石油輸出国機構(OPEC)加盟国からの輸入が47%減、ペルシャ湾地域からが約40%減となるなど中東からの輸入減が目立つ。
米国は2018年、シェールオイルの増産により原油生産量で45年ぶりに世界首位となった。20年には年間で原油などの「純輸出国」となる見通しだ。米国からの石油供給の増加は、潜在的に原油相場を押し下げる圧力となる。
トランプ米大統領は「米国第一」を掲げ、内戦が続くシリアや、アフガニスタンなどからの米軍の撤収に意欲を示していた。米国が中東産のエネルギーにそれほど依存しなくなれば、中東への関与が低下して「力の空白」が生まれ、地域が不安定になるとの懸念も出そうだ。
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