日本電産・永守氏 企業の本質、バランスシートに
永守重信 株投資で学んだ極意(下)
投資歴60年、日本電産・永守重信会長(76)は株で学んだ知識や経験を経営にも生かしてきた。果敢なM&A(合併・買収)の裏で、財務への目配りを欠かさないのもその一つだろう。「売上高10兆円」など損益計算書ベースの目標を口にすることが多いが、インタビューの中で永守氏は「企業の本質はバランスシート(貸借対照表)にあらわれる」と強調した。
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M&A、まずバランスシートから
『技術ベンチャー社長が書いた 体あたり財務戦略』という永守氏の著書がある。日本電産が株式を上場する2年前の1986年に発行され、いまは絶版になっている。オークションサイトに出ると数万円の値がつくことがある。たまたま古本屋で見つけた同書を見せると、永守氏も驚いた様子で話し始めた。
「知り合いから息子が起業をするのでその本をほしいといわれたが、どこにもない。それはベンチャー企業向けに書いた本だけどね。できれば少し書き換えたうえで、もういちど出版できないかと思っている」
お金の借り方や危ない会社の見分け方など体験に基づいた実践ノウハウが紹介されているが、目を引くのがこの頃からバランスシートの重要性を説いている点だ。「経営者はバランスシートの内容をソラで言えることが大切」と同書は指摘する。
「今もバランスシートが大事だという考えは変わらない。借金が増え、自己資本比率が低下してきたりしてバランスシートが崩れたら修正が必要になる。もちろん、そこをシビアに考えすぎたら、新規の企業買収などできない。今からこの会社を買う、何年先に元のバランスシートに戻せるか、と考えながら資金計画を立てる」
「M&Aの相手先を分析する時もバランスシート
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