高スキル人材、不足なお 英調査、日本ワースト2位
報酬増も雇用慣行に課題
英系人材サービス大手のヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン(東京・港)は21日、世界の人材需給に関する2019年版の調査結果を発表した。データサイエンティストなど高いスキルを持つ人材を確保する難易度を表す指標で日本は調査対象の34カ国・地域でワースト2位だった。18年の最下位からは脱したが、依然として深刻な人材のミスマッチが続いている。
「人材ミスマッチ」の項目で日本は9.8点だった。NTTデータ、ソニー、NECといった大手企業で優れた若手技術者らに従来より高額な報酬で処遇する制度を取り入れる動きが相次いでいる。トップクラスのIT(情報技術)人材に支払う給与を増やしたことなどを反映して、昨年の最下位(10点)からわずかに改善した。
IT人材は、米グーグルなど「GAFA」と呼ばれる海外IT大手やスタートアップも含めて世界的に争奪戦が激しくなっている。
英ヘイズがまとめた19年版の給与ガイドでは、日本のIT人材の年収は中国などアジア主要国と比べても低い結果が出ている。データサイエンティストは日本で1200万円だが、中国では1600万円に迫る。サイバーセキュリティーコンサルタントは日本の1300万円に対し、香港では約2500万円だ。人材獲得競争では不利なままだ。
ヘイズ日本法人マネージング・ディレクターのリチャード・アードリー氏は「日本ではAI(人工知能)技術者やデータサイエンティストなどの需要は拡大しているが、高いスキルを満たす人材がまだまだ足りない」と指摘。「雇用慣行や教育のあり方を見直し、実績に基づく報酬・昇進の仕組みや、継続してスキルアップできる学習環境を整える必要がある」と強調する。
一方、最下位は10点の米国などだった。日本とは逆に高い報酬が下がる傾向があったためで、昨年(8.4点)より後退した。ただ「日米で比べれば高スキル人材への賃金格差はまだ大きい」(同社)という。
調査は英ヘイズが英調査会社オックスフォード・エコノミクスと共同で12年から実施している。「人材ミスマッチ」のほか、労働法制などによる「労働市場の柔軟性」や「賃金(上昇)圧力」など7項目を10点満点で評価。数字が高いほど企業が人材を採用しにくいことを示す。
7項目全体での日本のスコアは6.1点で昨年の5.9点からやや悪化し、すべての国・地域の平均(5.4点)を上回った。「労働市場への参加」や「労働市場の柔軟性」などの項目が昨年より悪化した。
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