印中国境対立、越冬も視野 協議で打開策見えず
インドと中国による国境の係争地域での対立が長期化し、両軍は越冬も視野に入れ始めている。印中の司令官は12日に7回目の協議を開いたものの打開策を見いだせていない。両国政府は13日に「対話を続け、できるだけ早く解決策を探る」との共同声明を出したが、現地ではにらみ合いが続いている。
印中はヒマラヤ山脈などで約3千キロメートルの国境が画定していない。両軍は6月15日に印北部ラダック地方の渓谷で衝突し、インド側は20人の死者を出した。
両軍は6月22日に係争地域から引き揚げることでいったん合意し、外相や国防相といった閣僚級の会談でも双方が早期に撤退する方針を確認している。ただ実際には部隊の撤退は進まず、両軍合わせ、約10万人が配置されているとみられる。
係争地域は山中の渓谷、温泉、湖などの複数の地域にわかれ、標高が4千メートルを超える場所もある。10月から気温が急速に低下し、冬場はマイナス20度程度まで下がる。春まで氷点下の気候が続くため、前線の将兵は過酷な環境での越冬を余儀なくされる。
印メディアによると印軍は対立の長期化を見すえ、最近になって暖房器具や防寒テント、防寒服を係争地域に送り始めた。
一方の中国側も現地の人員の増強に動いている。「炊事員、運転手、管理員を追加で募集します」。中国人民解放軍のインド担当は17日までこんな周知を続けるという。いずれも大卒以上の高学歴者を求めているのが特徴だ。中国のネット上では「インドとの対立の長期化に備えて冬ごもりをする準備だろう」との観測が飛び交っている。
中国外務省の趙立堅副報道局長は13日の記者会見で「インドは係争地域で今もインフラ施設を増強し、兵力を増やしている」と非難した。「中印の緊張を高めている根源的な理由だ」とも語り、両政府による批判の応酬が収まる気配はない。
印メディアは11月に予定される新興5カ国(BRICS)首脳会議にあわせて、モディ首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席が個別に会談する可能性を指摘している。両首脳は2018年と19年に会談を重ね、領土問題を棚上げすることで合意したが守られていない。首脳同士の対話がなければ状況が進展しないとの見方も出ている。
(馬場燃、北京=羽田野主)