首都圏マンション需要なき価格上昇 28年ぶり6000万円
4~9月平均価格 発売戸数は27年ぶり低水準
不動産経済研究所(東京・新宿)が17日に発表した2019年度上半期(4~9月)の首都圏マンション市場動向で、平均価格が1991年度上半期(6137万円)以来28年ぶりに6000万円を突破した。建設費の上昇で価格が高騰したため売れ行きは鈍化しており、契約率も11年ぶりの低水準となった。需要が低迷する中で価格が高騰する異常な事態になっている。
19年4~9月の平均価格は前年同期比約4%増の6006万円と、東京都を中心に首都圏は全体的に上昇した。前年同期の下落から反転した。
91年度上半期はバブル期の最後で、80年代から高級マンションが増え価格が高騰した。その後バブルがはじけて地価が大幅に下がると、マンション価格も2000年度上半期には3968万円まで下落した。03年ごろから都心部のタワーマンションブームが起きて価格が上がり始め、東京五輪の開催が決まった13年から上昇傾向が続く。
一方で物件は売れていない。4~9月の契約戸数は前年同期比約15%減の1万3483戸にとどまる。契約率も、売れ行きの好不調の目安である7割を下回る64.6%と、08年上半期(63.9%)以来11年ぶり低水準となった。9月末の販売在庫数も6780戸と1年前より730戸多い。
4~9月の発売戸数は1万1996戸と前年同期比約22%減少した。4~9月の発売戸数が前年同期を下回るのは6年連続で、92年度上半期(1万357戸)以来27年ぶり低水準となった。
売れ行きが鈍化して、不動産業者が新規の発売よりも在庫の圧縮を優先したにもかかわらず、契約率が低迷している。
「価格上昇で消費者に慎重な姿勢が見られる」。不動産経済研究所の松田忠司主任研究員は建設費と地価の上昇でマンションの価格が上がったことが需要を下げる要因になっていると説明する。
東京カンテイ(同・品川)が18年に発表した調査結果によると、各地域の新築マンション価格が年収の何倍かという「年収倍率」が首都圏で約11倍に達した。特に東京都は約13倍と極めて高い水準にある。
五輪開催が決まった13年以降、都内でホテルや公共施設の工事が急増した。さらにホテル用地との競合で都心や駅から近い人気エリアのマンション向け用地の取得が難しくなっている。東京都区部の住宅地地価も大幅に上昇し、高価格帯の物件の発売が増えたことが価格を押し上げた。
不動産業界では首都圏の価格は当面大きく下がらないとの見方が強い。国土交通省によると、11年度の建設工事費の水準を100とすると、19年7月は113に上る。人件費を中心に建設工事費の増大から業者が価格を下げる余地は小さい。人手不足は解消の兆しがみられず、建設費は高止まりするとみられている。
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