中国、非製造業も痛手 2月景況感が過去最低
【北京=原田逸策】新型コロナウイルスによる中国経済への打撃がリーマン・ショックなど過去の危機の際にも底堅かった非製造業にまで広がってきた。29日発表の2月の景況感は製造業だけでなく、非製造業でも過去最低を記録した。工場の操業再開が遅れたうえ、新型コロナが消費を直撃してサービス業も落ちこんだためだ。3月に生産や消費がどれだけ正常化するかが今後の中国経済の回復のカギを握る。
2月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は前月比14.3ポイント低い35.7と市場予想(46)を大きく下回った。リーマン危機で大きく落ち込んだ08年11月(38.8)も下回り、統計を遡れる05年1月以降で最低を記録した。
原因は工場の操業再開の遅れだ。大企業は9割が再開したが中小企業は3割止まり。魏建国元商務次官は28日に「原材料の調達難などで操業再開しても生産を継続できない、増産できない問題がある。新規受注がない問題もある」と語った。
生産動向を映す中国の発電大手6社の石炭使用量をみると、例年ならば春節(旧正月)から20日もたてば通常に戻る。今年は1カ月が過ぎても、16~19年の平均の3分の2で低迷したままだ。
交通運輸省によると28日の鉄道・道路・船舶・航空の旅客数は計1571万人回だ。直近の底である6日から4割増えたが、前日比では3日連続で減った。感染を警戒し、春節で農村へ帰っていた出稼ぎ労働者のUターンが緩やかなためだ。
PMIでは非製造業の大幅な悪化も見逃せない。前月比24.5ポイント低い29.6と08年12月(50.8)を下回り、過去最低だった。製造業よりも非製造業のほうが低下幅が大きく、水準も低い。
金融危機の08年、人民元切り下げの15年など製造業が苦境の時も、中国の非製造業は急拡大したインターネット産業を中心に底堅かった。新型コロナは非製造業のほうが打撃が大きく、みずほ総合研究所の三浦祐介主任研究員は「リーマン当時よりも影響が産業全体に及んでいる」と語る。
原因は消費の急減だ。国際通貨基金(IMF)元副専務理事の朱民氏の試算では、1~2月の売上高減少は旅行が9千億元(13兆5千億円)、飲食が4200億元、モノの電子商取引(EC)が2100億元にのぼる。オンライン教育(1200億元増)やゲーム(200億元増)は増えるが、差し引き1兆3800億元のマイナスという。
朱氏は2月下旬の講演で「(新型コロナが収まれば)落ちた消費は盛り返すが、すべての穴は埋まらない」と話し、生産より挽回が難しいとみる。03年に重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が広がった際も、国内総生産(GDP)の成長率は03年通年で02年を上回ったが、消費の伸びは下回った。
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