「深海魚が現れると大地震」は迷信 東海大など検証
過去90年の事例と地震記録を照合
深海魚が現れると大地震が起こるとの言い伝えは迷信――。東海大と静岡県立大の研究チームは、深海魚が海岸に打ち上げられたり、漁網にかかったりした過去約90年の事例と、地震の発生記録を照らし合わせ、こんな結論を導き出した。
深海魚と地震を関連づける言い伝えは江戸時代の奇談集「諸国里人談」に書かれた人魚の伝説が最初とされ、一部の深海魚は「地震魚」と呼ばれることもある。チームの織原義明・東海大特任准教授(固体地球物理学)は「関連性が分かれば防災に役立つ情報になると思った」と話す。
織原さんらは、深海魚の出現に関する学術論文を探すだけでなく、出現すると地方紙などに取り上げられることから過去の新聞記事を調べることを思いつき、国立国会図書館で記事を閲覧。さらにインターネット上で見つけた深海魚に関する話を記事で確認したり、全国の水族館が公開している出現情報を調べたりした。
気象庁に震源などのデータが残る1923年以降の出現事例を集めると、28年11月26日から東日本大震災の起きた2011年3月11日までで計371件。地震との関連が指摘されたことがあるリュウグウノツカイやサケガシラなど8種類に絞ると336件あった。
同じ期間中にマグニチュード(M)6以上の地震は221回記録されていたが、深海魚が見つかった日から30日以内に半径100キロ圏内で発生した地震を調べると、該当したのは07年7月16日の新潟県中越沖地震だけだったという。
織原さんは「今回は無関係という期待外れの結果となったが、今後もイルカやクジラの集団座礁と地震の関係などを調べていきたい」と話している。〔共同〕