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不動産市場・座談会 東京に中国人投資家が再び触手

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長期化するコロナ禍で先行きの不透明感が強まる景気動向を受け、世界の主要な中央銀行は量的緩和政策を打ち、景気を下支えする姿勢を強めている。あふれたマネーはどこに流れ込むのか。投資家は、金融資産に比べて流動性に劣るものの実需が見込める不動産の価値を見直している。不動産事業を手掛ける経営者や投資家に「日本の不動産の先行き」についてざっくばらんに語ってもらった。

――本日は座談会にお集まりいただき、ありがとうございます。皆さんは普段から不動産投資を手掛けたり、国内外の投資家とやり取りをされたりしています。まず、どのようなビジネスや投資案件を手掛けているか教えてください。

市川隆久氏「私は国際不動産エージェント(東京・千代田)という会社の代表を務めています。海外の不動産売買が得意で、日本企業が海外進出する際のコンサルティングなどを手掛けています。取り扱いがある実績国は21カ国になりました」

伊藤幸彦氏「アスタリスク(東京・千代田)の伊藤です。私は米ニューヨークで起業して、民泊などへの投資や運営を行っていました。現在は海外の投資ファンドや個人の富裕層の代理人として、海外と日本の双方向で不動産投資に携わっています」

池田哲郎氏「マクロマイスター(東京・新宿)代表の池田です。都心の好立地の事業用地を仕入れてオフィスやトランクルームなどを経営するデベロッパー事業や、AI(人工知能)を活用して不動産の仕入れから売却まで自動化させるプラットフォームの運営など行っています。以前は日系の投資会社で投資アナリストをしていました」

李天琦(リ・テンキ)氏「私は中国の蘇州で生まれ、10歳から日本で暮らしています。ディー・エヌ・エー(DeNA)で人工知能(AI)の研究をしていましたが今年起業しました。大学時代からAIを活用した不動産投資をしています。不動産情報は東京だけで1日に約2万件の更新があるため、自作AIで全ての情報をチェックして、割安と判断した物件を売買して利ざやを得る投資を得意としています」

――コロナ禍で不動産市況も先行きが読みにくくなっています。投資活用や投資家の動向に変化は見えるのでしょうか。

李氏「実は今週(7月16日)もマンションを3件購入しました。首都圏の不動産データをみると面白い現象が起きています。都心部での成約件数が減っているのですが、成約金額は上昇傾向にあります。つまり、コロナ禍によって手続きが滞り、成約が難しくなっているだけで、売り主は急いで売却しなくても良い状況であると気づいてきた。買い手がいると分かったのでしょう」

「コロナ禍による混乱は、不動産を買う側としては有利な状況を導きました。特に指し値(買い主が希望する購入価格)が通りやすかった。海外富裕層などライバルとなる投資家が減っていたからです。特に中国の富裕層はコロナ前夜、キャッシュ一括で購入する場合が多く、都心部の不動産を1カ月ほどの短い商談で購入していました」

「最近は中国に住む富裕層の友人から『東京で良い物件があればすぐに紹介してほしい』との問い合わせが再び増えています。香港の民主化デモなど政治情勢が不安定になっているため、人民元への不信感が高まって資産を海外に移したいと考えている。香港で働くエグゼクティブが日本に拠点を移したいというニーズもあるようです。コロナ禍による海外渡航の制限が掛かっているため、物件の見学に来日できないだけで、中国人投資家の意欲は衰えていません」

「最近は中国国内でオンラインによる不動産投資が活発になっています。こうした仕組みはコロナ禍によって、急激な勢いで広がりました。ウェブ上で商談して現物を一度も見ずに買うのが当たり前になっている。経済発展が著しい深圳では住宅の購入者が増えすぎて、市が新たな住宅購入の規制を始めたほどです」

伊藤氏「日本の不動産は土地と建物の個人所有権がしっかりと認められているので海外投資家に人気があります。中国では土地の使用権だけが認められ、居住用地70年、商業用地40年という制限があります。借地は気に入らないという中国人投資家が、日本の土地所有権に魅力を感じて投資するのでしょう」

池田氏「マレーシアも中国と事情が似ています。アジアの不動産市場を見渡すと、日本のように土地への投資に恵まれた環境は少ないのです。日本はアジア圏から近い。アジアの富裕層にとって、市場が確立している米国より、訪れやすい日本の方が投資の魅力があります。課題は海外投資家が日本で暮らすことを考えた場合のハードルの高さです。帰化には5年、永住権には10年の在留期間が申請の条件となっています。『投資用』と割り切るならば問題ではないのですが」

市川氏「現地で現物を見ずに不動産を買う動きは日本人の間でも起きています。以前は、顧客と海外に行って現地ツアーをする必要がありましたが、最近はオンラインセミナーを開催すると、その情報などを頼りにインターネット経由で情報を調べ、非対面で投資する方が増えてきました。日本人の不動産投資家に人気なのはオーストラリアです」

「オーストラリアでは住宅の需要に対して供給が下回っているため、市況に底堅さがあります。ここしばらくは豪ドル相場が対円で安かったことも手伝い、日本人投資家がブリスベンやメルボルンの物件を物色しました。オーストラリアは日本との時差が少なく、リタイア後の居住地としても人気です。このまま価格が上昇すれば後で買うほど損をするので、今のうちに買ってしまおうというニーズもあるようです」

日本の「ラグジュアリー」物件の弱さ

――日本の不動産は海外投資家から見て「相対的に魅力が増している」と言えるのでしょうか。

池田氏「インバウンドが消失したことで、ホテルREIT(不動産投資信託)は安定性が見込めないため、海外投資家が手を引き始めています。しかし、既に投資家から集めてしまったREITの資金は『ホテル事業で運用する』といった目的のため、すぐに方向転換ができません。REITで購入した物件を売却する動きが出ていると聞いています」

伊藤氏「日本の観光に魅力がなくなってしまった訳ではありません。例えばスキー場などへの投資は、依然として海外投資家が注目している。課題は国内の観光地にラグジュアリー物件がほとんどないことです。観光地の開発は日本の鉄道会社などが手掛けてきましたが、高級物件の運営ノウハウがないため、海外企業を呼びこんで対応してきました」

「また、ラグジュアリーなホテルを新設しようにも、国立公園に近いスキー場などは自然公園法によって建設に規制がかかります。それが海外投資家の不満になっており、『日本では不動産の所有権が認められているのに、なぜリゾート地のホテルはダメなのか』という点が海外投資家を呼び込む上での足かせになっています」

市川氏「ラグジュアリー物件は住宅分野でも同じことが言えます。世界の不動産市場を見ると、米ニューヨークや仏パリでは坪単価600万~700万円、50坪で3億円ほどの高級物件が市場に存在する。バスルームが2つあるような富裕層が満足できる住宅がちゃんとあるのです。日本は実需の延長線上でのみ住宅を建てるため、ラグジュアリー物件が少ないという背景があります」

李氏「高級物件はなくても日本の住宅は中国人投資家にとって魅力的です。それは、圧倒的にコストパフォーマンスが良いからです。建物の施工品質が違う。北京や深圳と東京のマンションを比べた場合、中国の物件は質が低すぎる。それでも国策で不動産バブルを下支えしているので、東京より中国の方が不動産価格が高くなってしまう。だから、中国人投資家からしたら、価格上昇も限定的であっても『東京の不動産がほしい』ということになるのです」

――首都圏や観光地以外の不動産を物色する海外投資家はいるのでしょうか。

伊藤氏「カジノを含む統合型リゾート(IR)を大阪が誘致するとの見方が広がっています。横浜IRへの参入を目指していた米カジノ大手のラスベガス・サンズが撤退を表明しました。東京への誘致も難しそうなので、海外投資家からは『大阪のホテルに投資してみたい』という声が上がっています」

池田氏「東京はそろそろ坪単価が高くなってきたので、関西方面の住宅を探す海外投資家も増えてきました。東京に比べればまだ安いため、郊外の戸建て住宅などにもニーズがあります。しかし、やはり『東京あっての大阪』という状況は変わりません」

――コロナ禍の影響でリモートワークを導入する会社が増えています。不動産投資家から見て、オフィス物件の魅力は低下しているのでしょうか。

池田氏「不動産投資会社がオフィスREIT用に集めた資金は、オフィス用途に投資しなければ規約違反になります。しかし、社会情勢が変わっているため、そのままオフィスを購入するのも難しい。集めた資金は分配金の支払いなどで持っているだけでコストが掛かります。そこで、オフィスとして活用しながら、住宅や商業施設を加えた複合施設が注目されています。建物の立つ地域の特性に合わせながら、必要な機能を盛り込んだ多目的用途の複合オフィスへの投資が増えてくるのではないでしょうか」

李氏「分散型のミニオフィスは需要が増えるとみています。現在のリモートワークは、『信頼関係の貯金』があった会社だけでうまく機能しています。ただ、これが続くと人と人とのコミュニケーションが希薄になって、イノベーションが生まれなくなります。オフィスに通う頻度は変わっても、人が集まる場所は必要になる。そこで、オフィスを各地に分散するような物件には投資資金が入りやすくなると思います」

伊藤氏「1つの建物での人口密度を減らすため、分散型オフィスが増えるという見通しには賛成です。ただ、ウィーワークのようなシェアオフィスはそれほど必要とされないのではないでしょうか。理由は利用料金が高いからです。大企業はサテライトオフィスの代わりとしてハイエンドなシェアオフィスの家賃を払えるでしょうが、中小企業はそういうわけにはいきません。おしゃれじゃなくてよいので、家賃の安い分散型オフィスのニーズが強まると見ています」

市川氏「大手企業も固定費削減のためにオフィスや社宅を売りに出していると耳にします。とは言え、すぐにオフィス移転も難しいので、不動産を不動産会社などに売却し、売却後も引き続き同じ不動産を利用するためにリース料を支払う『リースバック方式』の不動産活用が増えるのではないでしょうか。いずれにせよ、新しい手法での不動産活用が増えることは間違いないでしょう」

(日経ビジネス 江村英哲)

[日経ビジネス電子版2020年8月4日の記事を再構成]

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